シンプルフライフィッシングのシンプルについて

 

この春、パタゴニア社からSimple Fly Fishingの本が出版された。これについては先に紹介したが、2014渓流夏号(つり人社)に共著者の一人であるマシューズのインタビュー「やっぱりシンプルがいいい。海を越えたTENKARAの種」が載っている。インタビューから、なぜ今アメリカでTENKARAなのかがわかる。

マシューズはモンタナのイエローストーンでフライショップを経営している。2011年のテンカラサミット2011で私の話を聞いてくれ、食事をして、翌日には一緒にテンカラをやった。歳も私と同じくらいで、言葉が通じれば間違いなく友達になれる好人物である。

インタビューによれば、アメリカのフライフィッシングはここ8年くらい沈滞期で、タックルに関しても、メソッドに関しても新しいものがなく、この間に多くのフライショップが潰れていった。そこに登場したテンカラは久しぶりにやってきた福音、と考えているようだ。

本にも、インタビューにも書いてあるがキャスティングが簡単なので「シンプル」と捉えている。フライのキャスティングは入門者にとって難しいスキルだが、テンカラのキャスティングはそれに比べて簡単で、フライフィッシングに導くためのきっかけとしてテンカラを広めようとしているようだ。

子どもたちを100人規模で集めたテンカラのクラスも行っているようである。日本とは規模がまるで違っている。将来、フライフィッシングにつなげようというアメリカのパワーを感じる。仕切っているのは合衆国森林局、つまり 国が動いているので急速にテンカラが普及する予感がする。

もちろん、今後、テンカラ→フライ、テンカラ→フライ→テンカラ、フライ→テンカラ、フライ→テンカラ→フライ、テンカラだけといういろいろな組み合わせが生まれると思う。

ただし、彼らの中にシンプルはキャスティングにとどまっていて、「シンプルなレベルライン」、日本のテンカラ毛バリのようにハックルと胴だけの「シンプルな毛バリ」という考えはないようだ。インタビューの2/3はフライパターンと、その素材に費やされているからだ。

日本の文化の一つの形として、レベルラインとハックルと胴だけの毛バリを使うのがテンカラとするTenkara USAのダニエルの流れと、ロッドをテンカラ竿に替えたフライフィッシングという2つの流れがアメリカで生まれつつあるようだ。

ダニエルは日本のテンカラを広めたいと思っていて、この流れを残念だと思っているようだが、相乗効果で彼のWebサイトのアクセスも増えているようである。

海外では日本とはまったく違ったSushiが生まれ、それが日本の寿司と思われているように、テンカラもアメリカの渓流や魚、釣り人の気質などに適応したものに変わっていくのは必然なのかもしれない。