2012テンカラサミット in ユタ 

(2)毛バリへの関心

オークションに持参したテンカラグッズには日本では期待できない以上の値段がついた。やはり一番人気は武田さんの竹の仕掛け巻きと、福田さんの魚の仕掛け巻きである。紙にそれぞれが名前を書き入れ、もっとも高い人が落札する。それぞれ60j程度であった。

手作りのものには高い値段が、工業製品が安いのは日本と同じである。私の「超明快レベルラインテンカラ」と「テンカラHit Vision」はそれぞれ1つづ買い手がついたが、2組は残ってしまった。日本語だから仕方がない。

意外だったのはカラー魚拓である。向こうでもカラー魚拓があるようだ。おそらく日本から伝わったものだろう。日本の繊細な魚拓からみればまだまだ初心者レベルで、いったんできた魚拓の紙に色を乗せ、その色が拓からはみ出ているのもあるが、こういう芸術品に対しては高い評価をつけるという。最高値で100ドルを越えていた。

参加者の関心の一つはやはり毛バリ巻きである。昨年、モンタナで私の毛バリ巻きをブライアンが撮ったが、それがしっかりDVDとして販売されていた。日本ではフライタイイングのDVDはあっても、テンカラの毛バリ巻きDVDは絶対に商品にはならないだろう。

さらに今年も、田中さんやジェイソンの毛バリ巻きをブライアンが撮影していたので、DVDその2として発売されるに違いない。ジェイソンは若い頃のクリント・イーストウッドに似ている。ベジタリアンとのことでどうりでスリムである。毛バリ巻きを撮影されるのはプレッシャーがかかると映画俳優にしてはシャイなことを言う。

日本でもそうなのだが、どのような毛バリを使っているか、他人の毛バリに関心が高い。テンカラでは違いは毛バリしかない。毛バリは餌でもあるので、毛バリの違いが釣果につながると思うからだろう。私など、どんな毛バリでもいいと割り切っているので、他人の毛バリに関心はないが、テンカラ初心者がほとんどのアメリカでは毛バリへの関心が日本以上に高い。

素材、巻き方を食い入るように見つめる。私など1分で巻けるいいかげん毛バリ巻きを皆さんの前で披露すると、「シンプル」という声が出る。50秒で巻いたのが最短毛バリ巻き時間としてギネスブックに載っていますというと、一様にオー! という顔になるが、もちろんジョークということも忘れない。

日本でも伝承毛バリを研究している人がいる。つい最近、発売になった雑誌「Fishing Cafe Vol.42」はテンカラ特集号で、この中の藤岡美和さんの「和式伝承毛鉤の調査報告書」がそれである。藤岡さんは全国約20地域の毛バリを再現、復刻し、それをハックルの巻き方(逆さ、普通)、毛の長さ(長い、短い)、毛の硬さ(硬い、やわらかい)をもとに分類したものである。

これを一般の毛バリ、エキスパートの毛バリと比較している。伝承毛バリは、普通、毛が長く、毛がやわらかいに分類される毛バリの割合が高い のが特徴のようだ。

宣伝するわけではないが、Fishing CafeのVol.42はテンカラ釣りセンセーションがテーマである。590円は安いと思う。

キャスティングクリニックをするとテンカラの技量がわかる。参加者にはまだまだ初心者の人が多い。テンカラが伝わってまだ2~3年だから当然だろう。体重のかけ方、グリップの持ち方、12時、10時、ピックアップスピードとフォワードキャストなどなど。動作がともなうので、ヘタな英語でも説明できた(ような気がする)。

テンカラガイズのエリックがキャスティングをみてくれという。本流テンカラの4.5mで毛バリまで7mのラインを振ってもらったが、まっすぐにラインが伸びない。このため私とは2m近い差が出る。これも仕方がない。

若いだけにパワーで毛バリを振ろうとする。力はいらない、スピードとタイミングなのだけれど。竿の反発力を利用して毛バリを飛ばすことがうまくできない。10分間以上、何度も何度も繰り返している。この集中力を見るとやがてエリックが腕をあげるのは間違いないだろう。

つづく