山の雷と鉄砲水

 
ある渓流にアユタヤ鈴村君といってきました。その渓流は本来、ジンクリアな水なのですが、早朝降った雨でサントリーの「麦茶」のようでした。増水もしているので、ここは車で仮眠。朝8時にみると、麦茶は、伊藤園の「おーいお茶、濃いめ」程度に澄んでいたので、では出発。この茶色い濁りは落ち葉などのタンニンが流れ出しているのだよと、以前、担任の先生から教えてもらったことがあります。本当かどうか保障の限りではありません。

空も晴れてきて、真夏の日差しが白い肌を焼く。ひょっとするとと思って、レインギア(要は合羽)を持参しました。これが後になって役立ちました。

ほどほどに小型ながらアマゴが釣れ、高地とあって汗もかかずに快調なテンカラでした。昼すぎた頃には、水は福寿園の「伊右衛門」程度に澄んできました。本来の「南アルプス天然水」になるにはもう少し時間がかかりそうです。

フト、明るさが少しだけ落ちてきたのに気づく。空を見れば、雲の動きが速い。次第に雲が集まり、あれよ、これよという間に白い雲は黒に変りました。これは来る!

どんどん雲は厚く、空は暗くなる。時間の問題だ。案の上、遠くから微かな光の後、十数秒してドドーンという音が。まだ遠いが、まもなく来る! レインギアを着る。ほどなくしてポツリの雨。やがて、雷は頭上に。突風とともに横殴りの雨。稲光の瞬間にドカーン、バリバリという雷鳴。雷は今、頭上だ!

ヒノキ林の木陰に避難しているものの、この雨をさえぎるものもなく、スパッツだったので容赦なく降る雨に、すでにパンツはビショビショ。パンツの中身は冷たい雨で小さくなっていた。寒い! 寒いはずだ。大粒の雨とともにバシビシと音を立てて、雹が降ってきた。雨と雹。ウヒョーである。

川の水が次第に増してきた。ドンドン増水する。増水が加速している。さっきまで二人がいた足場にはヒタヒタと水が迫ってきている。雷は1時間も頭上で怒り狂っていた。さしもの雨もこやみになった。しかし、今からドーンと水かさが増えるぞ。支流という支流から一気に水を集め、あっという間に激流、濁流に変った。水色はスターバックスのカフェオレである。これがさっきまでの穏やかな、慈愛にあふれた同じ渓流とは思えなかった。

山の雷は怖い。レインギアを用意してあったので、なんとか上半身は濡れずに済んだが、そうでなければズブ濡れの寒さで山を降りることになった思います。もし、対岸にいて、判断が遅ければ、水が引くまで戻れずにスワ遭難か、そうなんかとなったかもしれません。早めの判断と退避、上がり口の確認、右岸、左岸どちらが安全かなど、気を配ることが大事だと思った次第です。

おっと! 鈴村君がマムシを踏むところでした。これにも注意しましょう。

あっという間に濁流に。真ん中の写真と同じ場所です。(動画)