サカナと水辺と森と希望

 

 

つり人社から『サカナと水辺と森と希望』(浦 壮一郎著)が発刊された。

 

浦さんはカメラマンである。同時に月刊「つり人」に毎号、渓流や渓流釣りに関わる様々な問題をとりあげているジャーナリスでもあり、この本は連載の中から表題にかかわる記事をまとめたものである。

 

つり人社のテンカラの取材の際、カメラはそのほとんどが浦さんだった。

 

写真になりそうな魚が釣れるとそこから少なくとも10分は釣りができない。多いときは20分になることもある。

 

なぜならあらゆる角度から魚を撮るからだ。カメラを換え、レンズを換え、光の具合を考え、レフ板を使い粘り強く撮る。その間、こちらは待つだけである。

 

記事に使うのはこのうち一枚かもしれないが、その一枚にかけるプロカメラマン魂に感心するばかりである。

 

本書は今の若い人たち、あるいはその子ども、孫たちがいつの日にか『本来あるべき日本の川』に出会えるように(前書き)、今、何をすべきかを魚、漁協、環境分野の研究者の論文、また取材をもとにまとめたものである。

 

・放流しても魚は増えない。CR区間や禁漁区が有効である。

・漁協は高齢化や組合員数減少により、これから解散する組合が増える。

・堰堤が渓流魚減少の大きな要因。スリット化で復活する可能性がある。

 

研究者は渓流魚を増やす方策を提案しているが、はたしてそれが漁協まで届いているのか、知ったとして漁協は実行するパワーがあるのだろうか。

 

また、堰堤のスリット化が渓流魚を増やすことがわかっても、それが工事業者まで届き、行うのだろうかと考えると歯がゆい思いがする。

 

かっての渓流を復活させ、いつでも渓流魚に出会える川でありたいと願う釣り人にぜひ読んでほしい良書である。