迷わない、ブレない

 

今年でテンカラを始めて50年になる。振り返れば50年、振り返らなくても50年。50年もやるといろいろなことを経験した。

長い間やると迷いが出る。長い間やれば迷わないのではと思うかもしれないが迷う。ただし私の場合であるが。

40代、50代の人と行く機会が増えた、というか年をとったので渓流は危ない。そこで若い人が介護してくれる介護テンカラである。年寄りと一緒に行ってくれるのはありがたい。

いずれも私が教えたことのある人である。自分の釣りが確立されている人が多い。

たとえばスズは私の2倍は釣る。Yも私より釣る。

竿、ライン、ハリス、毛バリが毎回同じである。共通しているのは毛バリは12、14番で、ドライフライ、ビースヘッドは使わず、レベルラインは2号。どんな状況でもこれである。迷いがないのだ。

私もそのような時期があった。サンスイのレモンイエローのレベルライン3号を使い、毛バリは12番のバーコードステルスだけである。ドライもビーズヘッドも使わない。

この頃はよく釣れた。ポイントを前にするとあそこで絶対釣れるという確信のようなものがあった。

今はブレている。シマノアドバイザーとして様々な竿を監修した。渓流であれば渓流テンカラ、天平テンカラ、渓峰テンカラ、Pacテンカラが使える。

渓流テンカラは言う及ばず天平も使いやすい。渓峰も源流では使い勝手がいい。

レベルライン2号は巻きぐせがつかないが細いので視認性が今ひとつ、3号もいいがソフティラインはそれにも増していいライン。

ライズがあったときのためにドライフライを用意しておこう。玉ウキが使える場所のために玉ウキを。魚が底に沈んでいるようならビーズヘッドがいいから何種類も準備する。

つまりこれらの組み合わせは無数にある。無数にあるので最適がわからなくなる。

50年やっても迷う。これまで散々やってきたので、釣ることは二の次でその状況にあった釣り方で楽しめればいいと思っているからか、もっと釣れる方法、最適な組み合わせがあるのではないかといまだ追求しているからなのか。また、その両方かも。

ドライに換えて、水面に出る魚を掛けるのは面白い、ビーズヘッドで底近いのを掛けたときはやったで感があり楽しい。

数を釣ることはいいと思っていないが「釣る」ためにはシンプルが一番なのだろう。ドライに換え、ビーズヘッドを使っても結果は普通毛バリだけで通した方がよく釣れるように思う。ように思うだけで確信ではない。

50年もやって自分の釣りが確立していない。これだと決めてしまうこと、つまりブレなければいいのだろうが、それが何なのか未だ迷っている。