自由な日本の渓流釣り

 

日本の川はいい。誰でも漁協の規則を守れば自由に釣りができるからだ。

 

例外はあるが基本的に日本の川は河川法で「公」のものである。このため川遊び、川下り、魚釣りなど誰でも自由にできる。

 

私の数少ない経験になるが日本のような国は少ないかもしない。所有者の土地を流れていれば川は所有者のもの、また川は釣りクラブのもののようだ。推測なので間違っているかもしれないが。

 

イギリスでの経験。招待してくれた釣りクラブがここが自分たちのフィールドと紹介してくれた川は泥炭地を流れているらしく、水の色は薄い醤油色である。彼らはワインレッドというがそのようにも見える。

 

川は狭く、その日は蚊が多かった。お世辞にも素晴らしいフィールドとは言えない。

 

ある釣りクラブでテンカラのデモと講習を頼まれた。そこは会員制のクラブで通訳の話では入会金はなんと1500ポンド(240万円)で、年会費が1000ポンド(160万円)とのこと。しかも入会まで5年待ちらしい。

 

そして17Kmにわたってクラブの川のようだ。クラブメンバーは高齢の人が多い。それだけのお金を出せるお金持ちのクラブなのだろう。

 

一人一人に手をとり講習したがほとんど初心者である。おそらくクラブハウスに集まり紅茶を飲みながら歓談し少し竿を出すサロンなのだろう。

 

当然、魚は一杯いる。ニジマスが列をなしている。先頭のニジマスがライズしているので一発で釣る。50cmである。

 

案内してくれた二人のメンバーはここの川では釣りができない。ただ特別に今日だけ釣る許可が下りた。二人はフィールドの違いに驚いたようだ。私たちには見えないがイギリスは階級社会なのだろう。

 

その前日、グレーリングがいるから釣らないかという話があった。日本にはいないグレーリング。もちろんである。

 

案内されたところもあるクラブの所有らしく、あなたはゲストだから釣っていいと言われた。ここも誰でもが自由に釣りができないようだ。

 

小雨の日で川はカフェオレにブラックコーヒーを混ぜたような色である。10cm沈んだら毛バリは見えない。金ビーズヘッドの毛バリで釣れた。

 

グレーリングの匂いを嗅げという。タイムの匂いがするだろう。ちょっとタイム。いくら嗅いでも魚の匂いしかしないけど。

 

 

アメリカの各地で同じような体験をした。コロラドのダニエルの家から3時間の「Charie Meyers Wild life Area」に行ったときのこと。乾燥した大地から絞り出したような川幅1520mの川が蛇行している。

 

すでに何人も釣りをしている。私たち5名の後にガイドがお客さんを連れてきた。川岸は踏み跡で道となっていて、踏み固められてテカテカに光っている。釣り人が絶え間ないのだろう。

 

ダニエルに聞いた。道中、いい川がたくさあるのに何故釣りしないのか。あれは人の土地だから釣りはできない・・

 

ロッキーマウンテン国立公園でも釣りができるところが限られていた。一度、ダニエルに案内された場所も踏み跡テカテカであった。

 

その2日後、ある人が今度は俺が案内してやると連れていってくれたところは、なんと同じ場所で、同じ金網から入った。釣りができるところは限られているようだ。

 

ニューヨーク州のキャッツ・キルに行ったときのこと。ダニエルも初めての土地で勝手がわからないので手頃な川で竿を出したら、たちまちピー! 出て行け。

 

イベントで知り合った方が自宅に招待してくれた。奥さんが日本人で日本びいきなようだ。自宅前の川をさし、あそこからあそこまでは自分の川だから自由に釣っていいよ。

 

台湾の標高2500mでニジマスを釣ったときのこと。そこは高原野菜を作っている土地である。経営者は台北に住む謝さんである。

 

謝さんの土地を流れる川は、謝さんの川で謝さんの魚である。だから謝さんの許可がなければ釣りができないのだ。 

 

ほとんど誰も釣りをしないので野性の魚(ニジマス)はこんなに警戒心がないのかと驚いた。渓流魚の警戒心は釣り人によるものなのだ。

 

韓国ではどこでも釣りができるように思ったが、北朝鮮まで20km、地雷が埋まってるから道を外れるなの警告。緊張感のあるテンカラだったのでそれどころではなかったのが正直なところである。

 

日本は自由である。ルールさえ守ればどこでも誰でも自由に釣りができる。いろいろな問題はあるがこの点はすばらしいと思う。