殖やすとともに減らさない工夫を

 

雑誌つり人に去る2月2日におこなわれた「渓流釣りの未来を考えるシンポジウム −ヤマメ・アマゴ親魚放流の可能性を探る」(主催:日本釣振興会)のDVDを希望者に配布する、との記載があったので振興会から送ってもらった。

主として親魚放流の方法、効果などを他の方法と比較するという内容である。渓流魚の増殖の研究者や、増殖に熱心に取り組んでいる両毛漁協の中島組合長の発表である。

かねがね指摘されている稚魚放流魚が15cmに育つ生残率が1%であるのに対して、親魚放流、発卵眼放流が2%という発表があった。そうなのか、自然で育つ魚は強いのだなと納得した。

だが、待てよ。稚魚放流が1%とすると1万匹放流して15cmになるのはわずか100匹ではないか。やっと15cmになってもあっという間に釣られてしまう。

漁協のHPには本日の釣果として50匹、60匹釣った写真が掲載される。なかには15cmに満たないものも多数である。

かりに10万匹放流しても1000匹である。稚魚1匹15円として150万円かけて1000匹である。このような計算から、稚魚放流した魚が15cmになるには、1匹はおおむね500円に換算されている。なので50匹釣った人は換算すれば2.5万円分釣ったことになる。

こんなに釣れますという漁協のPRであるが、それを見て出かけた人が更に釣ってしまい、やがて、めっきり釣れなくなる。そうなると、あの漁協は釣れない、魚がいないとなる。たくさん釣れることをPRすればするほど、魚を減らし、評判を落とすことになる。

いかにして殖やすかは研究されているが、いかにして減らさないかの研究はない。研究者はこのような研究はしないからだ。

全面禁漁区では釣りができない。全面C&R区間もできない。現実的なのは匹数制限ではないかと思う。人のクーラーを覗くわけにはいかないが、匹数に制限があることは釣り人の心を抑制すると思う。

アメリカのように1日2匹(州により異なるようだ)にして違反は犯罪となれば魚は残るが、魚食文化の日本にはなじまない。

匹数制限で減らさない工夫をしている漁協はないのだろうか。 減らさないシンポジウムを開いてほしいものだ。