夢枕 獏さんのテンカラ

 

陰陽師、大江戸釣客伝などで有名な夢枕 獏さんにテンカラを教え、対談した。雑誌『Fishing Cafe』の取材である。獏さんは釣りが大好きである。岐阜県馬瀬川の河端に山荘があり、そこで仕事と釣りをしているようだ。

実に気さくで気持ちのいい人である。作家という構えたところがない。山荘の中も正直、ぐちゃぐちゃで、釣り道具があちこちに。それだけにこちらも気安い。ご飯食べましょう。ご飯は残りものを一緒につつく。

さっそくテンカラである。歩いて30秒で馬瀬川。

これまで一度だけ真似ごとでテンカラをやったことがあるようだが。実に上手い。ヨイショなしで上手い。

2回目でこんなにキャストでき、ポイントを掴む人はこれまでいない。上手いと思うのは1時間半の間に、ハリスにコブ一つ作らなかったことだ。初心者ではありえないからだ。

竿はシマノ「渓流テンカラ」 レベルライン3号を3.5m、ハリス0.8号を1mの標準的な仕掛けを使ってもらった。毛バリはバーコードステルスである。

約1時間半あまりのテンカラだったがこの間にイワナ2匹、ウグイ1匹掛けている。

鮎のいる場所で日中のわずかな時間だったのでこの程度だったが、渓流ならばたちまちツ抜けである。教えたことがすぐにでき、憶えたことは忘れない。運動神経と頭がいいのがわかる。

なぜテンカラをやりたかったのか。今、構想中の小説は「レインボー」とのこと。南アフリカに行ったとき、いるはずのないニジマスがいて、それはボーア戦争の頃(1880-1881年)にイギリスから卵を持ち込んだからという。

それを持ち込んだのはイギリス人だけでなく日本人もいた。その日本人は明治のはじめ頃、テンカラをやっていて、世界を旅してイギリスに渡り、イギリスのフライフィッシングと日本のテンカラが・・・という小説とのこと。小説なので、実際はどうなのかわからない。

このためにテンカラの歴史やテンカラの道具、釣り方などを知りたいので山荘へ。話しはつきない。おもしろい。発想がすごい。南アフリカにレインボーがいたことから着想して小説にするのだから。小説が待ち遠しい。

テンカラにすっかりはまってしまったとのこと。次回、どこにいきましょうかと話が進んでいる。