シマノのテンカラロッド、メイストーンの評価

 

シマノからメイストーン(Maystone NW)が発売されたので、アッシーをしてくれるニッシー西尾さんと、竿を手にして郡上へGO。前夜から降り続いた雨で水は澄んでいるものの10cm高で水は冷たい。10℃あるかなしか。

地元ではすでに藤の花が咲き出したが、郡上の渓流は、まだ木によっては桜も満開で、新緑も今まさに芽吹いたところ。半月余り逆戻りした春である。

メイストーンは3.3mと3.6mがあるので、まず3.6mを試す。ラインはフジノのストレートライン「パワフル」の3.3m。パワフル3.3mは、ラインが3.3mでマーカーが30cmなので、実際は3.6mである。これにハリスを0.8号1mにした。

毛バリはいつもの黒い胴、茶色のハックルのバーコードステルスの14番。活性が低いとみて小さめの毛バリを選ぶ。

振った瞬間、何、この軽さとしなりの良さ(驚き)。まさに竿がラインを運んでくれる。指を軽く添えるだけで勝手にラインが飛んでいく感覚。

西尾さんも竿の軽さとバランスの良さ、キャスティングの正確性に驚く。ズバリ、チカラがいらない竿です、と西尾さん。

前振りしたとき、竿がブルブル振動せずにピタッと止まるためラインがまっすぐ、すなおに飛んでいく。これはいい竿だ。

私はシマノの竿のアドバイスをしてきたが、この竿の監修はしていない。通常、1本の竿を出すとき2シーズンかける。数回のテストロッドの試し釣りとダメ出しを繰り返して完成させる。シマノではそれだけ手をかけている。

この竿は監修していないので評価するのをためらったが、シマノのロッド開発者から、私のこれまでの多くの監修をもとにしたものなので、私の監修と言ってもいい竿ですとの言葉があったので、評価することにした。

正直、掛け値なしでいい竿である。もちろん本流テンカラ、渓流テンカラ、Packテンカラ、テンカラBBキット、いずれも前述したように2シーズンかけて監修した竿なので、私にはいい竿を出したという自信がある。

メイストーンは、これまで私の監修した竿とは違うティストである。3.3m、3.6mともこれまでの竿(他社を含む)より断然細い。細いけれども強い(剛性がある)。細いメリットは風切り抵抗が少ないことである。

一日に1000回以上、多いときではさらに振るテンカラでは、竿の自重自体より、風切り抵抗が少ない細い竿が求められる。

細く、軽くするのは肉厚を薄くすればいいが、これでは簡単に折れる。折れるのはテンカラ竿の最大クレームである。

値段の高いカーボンを使わないで、細いけれども強い竿という二律背反をクリアするのはロッド開発者の悩むところであるが、これを見事にクリアしている。

全体にテーパーが少なく、ロッド全体でチカラを分散する印象である。このため取り込みのとき、竿がきれいな円弧を描く。スパイラルXを採用しているので、捻じれがまったくなく、魚が素直に寄る。

 

 

開発者奮闘記

http://fishing.shimano.co.jp/fishing_info/fishing_report/keiryu_kaihatsu/59/index.html

これまでにないフライテイストである。まずグリップに木が組み込まれている。オシャレだけでなくグリッピングするとき、ここを持つとバランスがいい。

コルクの質がいい。最近、良質のコルクが入手できないと聞くが、肌の細かい良質のコルクが使われている。

フックかけもある。ここにハリをかけておけば移動の時に便利だ。

先端は金属の「超感」トップが使われている。水中のアタリの感度がいいとのことだが、水中のアタリを竿の感度でとることがないテンカラで、どうなのかと思う。まだ良さがわからないだけかもしれないが。

塗装にはこれまでのテンカラ竿にはなかった細かなラメが入っている。細かいところにオシャレ感がある。

シマノの一連のテンカラ竿の後発なのでまだまだ知名度がないが、いずれ劣らずいい竿である。テンカラ竿になかったフライテイストを採り入れたところが斬新である。

この竿はもっと知られていい竿である。3.3m、3.6mで使い分けすればいいだろう。私は今シーズン、この竿を使うことが増えるだろう。どこかで私を見かけたら、竿を見たいと声をかけてください。

ところで肝心の釣りはどうだったのか? 雨の後の高水で、しかも冷たいということもあり、出るのは15~18cmのアマゴで、それもせいぜい膝くらいまでの浅場である。深いところは底についているようで反応はない。

夕方5時近くなり、ハッチが始まった。いっときは風に乗って帯のように虫が飛ぶ。このハッチで活性したのがイワナである。短い時間ながらイワナの入れ掛かりになる。といっても大きくて23cmどまりであるが。十分、楽しんだ一日である。

郡上はまだ本格的なテンカラシーズンには早い。郡上で藤の花の咲くのもまもなくである。