にわかフライマン

 

今年も残すところ、あと362日の正月3日に今年を占う初釣りに天竜川船明ダム下のC&R区間へ。

話には聞いていたが一度も行ったことはない。それというのもここはテンカラ禁止なのだ。フライかルアーなので急遽、即席フライマンに。

竿は? そうかフライマンだからロッドと言わなければ。ロッドは今から25年以上前になると思うが、テンカラロッドとして出たものである。2.7mの3本継、もといスリーピースのグラスロッド。

3本の継ぎ方は穂先に近い方の径が太く、フライロッドにはよくある継ぎ方で、下のピースにかぶせるようになっている。ただ、テンカラではこの継ぎ方ではラインが木にかかった場合、簡単にスッポ抜けてしまう。

おそらく元々はフライロッドだけれど、ガイドをつけずにテンカラロッドとして売り出そうとしたものだろう。

これを見たのは25年、あるいはもっと前だったかもしれない。スッポ抜けや2.7mという長さからこれは使えないと思い、それ以降目にすることはなかったが、なんと数年前にヤフオクに出ていたのだ。

先端が3センチほどかけているのでジャンク品。競合する人もなく3000円で落札した。ひょっとして何かに使えるのではないかと。

そうか、もともとはフライロッドだから、これにガイドとリールシートをつけてフライロッドにすればいい。

適当にガイドと海用のリールシートをつけた。ところでリールは? 今回、一緒に行ってくれたTカメラマンがこれでよければと以前、プレゼントしてくれたものである。これに1番のフライラインを買って巻き付け、この日の晴れの出番となったのである。

にわかフライマンの晴れの出番にふさわしく天気は快晴である。新東名の浜松浜北ICから40分である。

すでに10人ほどが竿を出している。Tカメラマンの師匠の白木さんと合流する。凄腕のTカメラマンの師匠なのですご凄腕である。

ダム下なので水が悪い。コンクリのシルトを薄めたような色である。水面から20cm下はよく見えない。

Tカメラマンや白木師匠からいろいろ教えてもらう。この時期なので水面までニジマスは出ないこと、石の脇にいるので石スレスレに流すこと、意外と足元にいるので立ち込まない方がいいこと。

立ち込まないようにしよう。底石がヌルヌルなので、滑れば寒中水泳の初泳ぎで年寄りの冷や水である。

そこに高橋さんの弟子のKさん登場。1週間前に女の子が生まれたとのこと、重ねてのおめでとうである。

昼までは師匠にアタリがあっただけでウンスン。Tカメラマンもウンスン。午後の部になり風が強くなる。フライロッドのいいところは短いので風の影響が少ないことだ。

右岸にまわると川ガラスがしきりに潜って餌をとっている。5秒間ぐらい潜り、3秒くらい息つぎをして、これを10回くらい繰り返すと小休止する。

この濁った水でも餌は探せるのだろうか。そもそも水中と陸上の両方で見える目はどのような構造なのかと仕事がら思ってしまう。

というのはヒトの目は空気の屈折率に合わせてできているので、水中では水の屈折率の違いでピンボケになってしまうからだ。

水陸両用の場合は水中では水晶体の形を変えるのかもしれない・・・なんて考えてること自体、すでにプッツンと切れているのだ。

突然Tカメラマンが「シマッた・・・」の声。アタリがあったみたいだ。Tカメラマンは石の上に座ってほぼ足元を釣っている。そうかこんな近くにいるのだ。濁っているので警戒しないのだろう。

時合いが来たか。俄然やる気になる。毛バリ、いやフライはTカメラマンがこの日のために巻いてくれたエッグである。色は赤。5cm上に小さいかみつぶし 、ではないシンカーをつけている。

フライラインとハリスの結び目がスッと引かれる。ううん? クッと合わせるとゴツゴツした引き。キターーァ。

ゴンゴンの引き。こいつはデカイど。ところが、リールは巻いた方がいいのか、巻かずにやりとりするのがいいのか。ニジマスが引いたらラインはくり出したらいいのか。にわかフライマンなのでわからない。

Tカメラマンが来てくれて「50cmオーバー」の声。こんな短い竿で50cmオーバーを取り込んだことはない。どうーしよう、どうーしよう、クラリネットが壊れちゃったのメロディが浮かん だ瞬間にバレる。1号のハリス切れである。

今年の釣りを占う初バレである。もっとも、占い、運勢、厄、宗教、縁起、あの世など一切信じていない。初ものがバレたのはこれ以上悪いことはないというの神様のお告げと思っている。

この後、Tカメラマンが3匹釣っている。私のエッグが赤だったことから、今は赤がいいとフライを交換したことが功を奏した。

私は今は赤だったので、赤は見飽きたので他の色に換えた方がいいだろうと白に換えたのだ。以降、アタリなし。ここがTカメラマンとにわかフライマンとの違いである。

4人でファミレスで反省会。がっつり系の肉を食べ、ドリンクバーでガボガボになるまで飲んで初釣りは終わったのだった。

川ガラスを見たので酉年にふさわしい縁起の良い年になりそうだ。