4) 盛り上がるテンカラサミット

 

ボランティア

サミット会場はエステスパークにあるイベントセンターである。レジスターした人が250名とのことで、早朝から準備である。前夜はボランティアのメンバーが近くのロッジを借りて、食事したり打合せしたり。

サミットの朝、パラパラと雨が降っていた。ここは標高2400mである。奥の山は4000m近いのだろう。この雨は山では雪だったようだ。

受付けでマーティンに再会する。彼とは2010年に彼の車でサンフランシスコのチェリークリークを案内してもらったので、7年ぶりである。71歳になったとのことでもう検事をリタイアしたかもしれない。

弟が電気自動車のテスラの会社にいるので、弟の車だけれど乗れという。1000万円くらいらしい。加速がすごいぞ。時速100kmまで3秒とのこと。やってみるよ。グ 、グーンと加速する。これを2回。背中がシートにめり込むような加速である。

前回は100名程度の参加だったが一挙に250名に増え、ボランティアも10数名である。ボランティアの中には飛行機でカリフォルニアから、東海岸から来た人などもいて、遠路なのでさぞ大変だったと思う(私が一番大変だったが)。これもダニエルの日頃を見ているので、手弁当でかけつけてくれるのだろう。

ダニエルが2009年に起業して、それを見てさまざまな個人、企業が参入してきた。結局はダニエルの開拓したテンカラビジネスに便乗してビジネスしているにすぎない。最初はダニエルである。なにごとも最初に道を拓いた人がいればこそである。

 

 

気配りと忖度

ダニエルも様々な商品が出回ることを快く思っていないが、ライバルは2つであり、他の個人や会社はライバルにもならないと言う。

一つはパタゴニア、もう一つはあるロッドメーカー(名前を忘れた)。この2つはライバルだという。では、そのライバルのパタゴニアのイヴォンをなぜゲストで呼んだのか聞いた。ライバルではあるけれど、尊敬の対象であり、自分にとってもプラスになるからということである。

イベント会場は広い。縦、横で80~90mぐらいある。ゼロ戦なら10機は格納できそうだ。アメリカは細部の造作は雑であるがベースになるところはガッチリ造る。この会場もそうだった。会場の1/4がプレゼンに。後はグッズ販売、フリースペースで使用する。

ダニエルによるサミットの経緯、サミットの意義などのプレゼンの後、アメリカ人のテンカラの基本についてのプレゼンがある。グリップの持ち方など。なんとスライドは黄緑の背景に白い文字である。

まったく見えない。このスライドで延々と行う。これで参加者は読めるだろうかという配慮、気配り、忖度(そんたく)はないのだろうかと思う。日本人にもこういう人はいるが、アメリカ人には多いように思う。

イヴォンの講演も同様である。予定の45分をはるかにオーバーして、途中で気づいたようだ。あとどれくらいとダニエルに聞いた。ダニエルはあと5分と。

あと5分と言えば、日本人ならもうまとめてくださいという趣旨と理解するが、そこから20分ほど話したので、ダニエルもハラハラである。

イヴォンの講演の内容は地球温暖化によりかってなかった様々な影響が起きている事例を紹介するものだった。釣りにおいてもしかりで気が重くなる内容だった。もちろん、加藤栄子さんが通訳してくれるからわかることである。

むっつりしているので真面目一方かと思ったが、講演ではジョークで笑いが結構あったので根は面白い人なのだろう。

地球温暖化に関して、参加者から日本でも影響がないかという質問があった。日本は雨の国である。日本でも温暖化の影響でこれまでにない豪雨が多発するようになり、そのため渓流環境が悪化している趣旨の説明をした。

 

 

kaizen

私の講演はステップアップするためのテクニックを話してほしいというダニエルのリクエストである。日本で行われている方法の一部を紹介した。

国内外にかかわらず、講演するとき、大事なのはスマイルである。淡々と話さない、いつも笑顔を。そしてジョークを入れること。楽しく話す人の話は楽しい。楽しいことは記憶に残る。

さすがに日本では耳タコのオヤジギャグは通用しないので、ほどよいところでジョークを入れた。笑ってもらえたので笑いのツボは同じである。それもこれも加藤さんの通訳があればこそである。

登録料は35ドル、ランチつきである。ランチはピザかサンドイッチを選ぶもので、ピザのボリュウムがないのでサンドイッチに長蛇の列である。

なぜかと言えばトッピングの注文を聞いて、狭い車内をいったりきたり。しかもそれを一人でやるので時間がかかるからだ。

ボランティアのアランが販売にkaizenが必要だという。突然、kaizenというので、何?と聞くと、修士のときトヨタの生産方式で改善を知ったのだという。それならと、トヨタでは乾いた雑巾を絞ると言われるほど改善するんだという話をする。当然、通訳を通して。

正直、サンドイッチはまずかった。私は食べ物に贅沢は言わないし、他人のものまで食べてしまうほど意地汚いが、これはマズイ。ポークを繊維状に裂いたものをパンに挟み、ソースをかけるものであるがマズイ。申し訳ないが残した。食べ物を残したのは初めてかもしれない。味にもkaizenが必要である。

カード社会である。ダニエルのブースではタブレットにカードリーダーをつけて、その場でカードで決済である。ここまで進んでいるとは。

竿、本など様々なものを買った人が私にサインをほしいと。もちろんWelcome。一釣懸命、毛バリの絵、テンカラ大王、そしてその人の名前に様を入れるのを忘れない。

様は、さんよりもグレードの高い呼び方なのですと、ヘタな英語で言うとよろこんでくれる。おそらく50名ぐらいにサインしたのではないだろうか。漢字を見ることはないだろうから記念になるだろう。

いろいろなテンカラグッズが出ていた。今回も毛バリケース、竿ケースなどがあった。息子は岩国基地で働いていると言って錦帯橋と一緒の息子の写真を見せる。自慢の息子なのだろう。

ユニークなのがあった。毛バリケース、ハリス、ラインが一体となったものが2つ。1つはアクリル板を削っていて、アクリル板を通して毛バリを見ることができる。厚いアクリルを切削している。

もう一つはレンコンのように穴をあけ、そこにマグネットを埋め込み、1つに穴に毛バリが2つ入る仕掛けセットである。2連になっている。

いずれも、一つのものにまとまめるとこうなるというアイデアである。2つとも造作は荒い。日本人なら、いかに綺麗に仕上げるかに尽力するが、必要なところをガッチリつくれば、細かいところは気にしないところがアメリカである。

 

 

ハンゾー

キャスティングのデモも行った。一連のデモの後、ランディングの仕方を教えてほしいとのこと。掛ったら魚を寄せて、竿を倒してとポーズを。

すると私が魚になるという女性が毛バリを掴んで引っ張る。そうこなくっちゃ。女性はジャンプしたり左右に動いたりして盛り上げる。それに合わせて、おおビック、ビューティフル、プリティなどの精一杯のお世辞を言う。

取り込んだあと、ゼイゼイはぁはぁのポーズをとり、酸素が薄いとジョークを言う。ここでドッと笑いが起こる。

今回、女性が多かったように思う。それも夫婦ではなく、女性一人の参加である。テンカラは簡単、お金がかからないなどの情報が次第に浸透してきているからだろう。

イベントはなんと夜10時までである。夜はバンドあり、マジックショーありで参加者を飽きさせない工夫がされている。各自、ディナーのあと毛バリ巻きに集まる。50名はいるのではないか。今回は瀬畑流の自己溶着テープの毛バリ巻きを紹介する。

スレッド、接着剤なしの毛バリ巻きを教えてほしいという人が列を作る。テンカラは竿、ライン、毛バリだけの3つに削ぎ落している。だからスレッド、接着剤なしの削ぎ落した毛バリに究極のテンカラをみるのかもしれない。そんな難しい話ではなく、単に興味があるからだ。

秋田犬を連れた女性がいる。黒とグレーなので最初、秋田犬とはわからなかった。名前はハンゾーとのこと。ハンゾー? 半蔵? 服部半蔵? そうだという。

せっかく日本の犬を飼うので日本の名前をつけようと調べたそうでハンゾーが気に入ったとのこと。うれしくなる話である。ハンゾーだけに忍びの歩き方で足音たてずに歩き、吠えることのない犬だった。

サミットは終わった。おそらく次は2年後だろう。毎年やると参加者が減るという私の経験をもとに2015年から一年間、空白を設け、2017に開催したからである。

今回、数名の参加者からダニエルにテンカラを教えてくれてありがとうと言われた。私にとって何にもまして嬉しい言葉であった(涙)。

終わり