北海道のポテンシャル その1

 

アメリカで釣りをして帰国した人からは「やっぱり北海道だよね」という声を聞くことがある。

私も何回かアメリカでテンカラをしているが、テンカラで釣る限り、北海道の方が数も多く、型もいいように思う。私が廻ったところがそうだったのかもしれないが 。

今年も奈良の中山さんの計画に乗っかって道東の弟子屈(てしかが)町をベースにして数日、テンカラを振った。 釧路空港から約1時間である。

ベースのペンションは「ゆうあん」。ゆうあんのオーナーの村上さんはフライマンである。村上さんの宿に泊り、ガイドしてもらう宿泊パックは ガイド料込みで1日約2.5万円。

村上さんの車で釣り場まで案内してくれる。ガソリン代は込みなのでリーズナブルである。

ペンションは温泉つきで広く、清潔で快適である。朝食のみで夜は町に食べに出る。

弟子屈の近くが屈斜路湖(くっしゃろ)である。湖から流れ出した水が釧路川になるようだ。この流れ出しがアメマスで有名とのことで 、アメマスは屈斜路でっしゃろと言われるらしい。言うのは私だけだが。

まずここに向う。いるいる。何が?

日曜とあっておおぜいのフライマンが。全員がスペイの釣りである。ボートの釣り人も。

いるいる。真っ黒に群れをなしたウグイが。

そのウグイの群れの中に 薄茶色のアメマスがゆらゆら定位している。50オーバーだ。あのアメを狙っているようだが、まったく動く気配がないので釣るのは難しいかもしれないな。

せっかくだから竿を出そうと、本流テンカラNPに5mのストレートラインをつけ、毛バリはビースヘッドからエッグまでいろいろ試した。

ガッ、来た! ぐいぐい引く。糸鳴りがする。これはやったぜ。幸先がいい。

最初は強烈なグイグイの引きが、次第にウグイウグイのチカラのない引きになる。案の定、ウグイだ。しかも50cm近いサイズである。キューと鳴く。鳴くな!  こちらが泣きたい。

ハリを外すのもやっかいだ。できるだけ触りたくない。そんなこんなでウグイ10連発で屈斜路湖を後にしたがレンタカーの中が異様に臭い。中山さんも釣りまくったので二人の手についたウグイの臭いなのだ。

見ている限りフライマンの竿も曲がらなかった。

翌日から村上さんのガイドである。今日は網走川の支流らしい。そこまで1時間余りである。

ここから入ります、と鹿よけの金網の門を外して川へ。鹿よけの金網は高さが2mぐらいあり、太い針金でしっかりできたもので、鹿とともに釣り人の畑 への侵入を妨ぐ役割をしているようだ。

二日前に降った雨の影響で水がやや高く、かすかにうっすら濁りがある。このあたりの渓流は河原がなく両岸の河畔林のあいだを水が一杯に流れている。

さらにほとんどがザラ瀬でところどころの掘れたところがポイントになる。このため中部の石と岩の段差の渓流に比べて遡行が大変 で、ウェーディングスタッフは必須である。しかも両岸の木々にも気を配らなければならない。この流れでは釣り下りの方が楽かもしれない。

村上さんはフライマンである。テンカラのガイドをするのはほぼ初めてのようだ。このためテンカラの仕掛けやキャスティング、毛バリ、取り込みに興味津々である。

やがて親しくなるにつれフライマンだけれど、テンカラマンに近いことが次第にわかるようになる。

この日は曇りで水がやや高く、うっすら濁りもあるためかハッチもなく、ライズの一つもない。 最初だけテンカラ毛バリを振ったが出る気配がない。

ならば沈めるしかないのでビースヘッド毛バリを使う。水深と流れの強さでヘッドの重さを換える。

ハリスは1.5号でOKとのこと。太いのでは? そんな心配はいらないことがすぐにわかる。細いハリスで自然に流さなくては・・・という日頃の釣り は無用で1.5号でもガンガン食ってくる。

この日の最大は42cmのニジマスである。水がやや高いので、ここならという本命の流れより、やや緩い流れについているだろうという読みがあたり、ストレートラインのマーカーがストンと止まった。

ガッ!自然繁殖した天然ものだけにパワーは一段上である。寄せては走られを三度繰り返してランディング というか岸にズリ上げる。このサイズのニジマスだとハリスをつまみ、手繰り寄せてネットインするのは難しい。

ここというポイントからはまずアタリがある。すべてニジマスであるが、中山さんがオショロコマを1匹。オショロではいいサイズのようだ。

尺を越えるのが数本出て、釣った魚は数知れずという贅沢な釣りになり、十分釣ったところで本日終了。 終了は6時。朝10時~6時までのガイドだった。

帰りは釣り上がってきた河畔林の中を歩く。ただ鹿よけ網が畑側にずっと張ってあるので熊笹やフキをかき分けて下る。

うっすら踏んだような道がついている。釣り人が歩いた道ではなく、鹿の歩く道のようだ。

笹とフキと雑木の中を30分かけて下った。これでドッと大汗が出た。あぁ疲れた。シンド。

明日はもっと楽なところにしてください。村上さん。