秋の芝川イベントは増水で苦戦

 

禁漁から1ヵ月。無性にわけもなく竿を振りたい、アブラビレのある魚を釣りたいという禁断症状(現在は離脱症状)が出るころである。真冬になれば、この寒さならとあきらめもつくが、まだ暖かだし、紅葉シーズンでもあるこの時期、症状が一番強くなるときである。

ということで今年も依存症のテンカラマンのための秋の芝川イベントを計画した。ときならぬ10月末の台風で、一週延期となった11月5日である。二週続いた週末の台風で、この日は30cm以上水が高い。これだけ増水しても水が澄んでいるのは富士山の湧水だからだ。

この時期は富士山に初冠雪があるが、すでに冠雪したものの2回の台風で溶けてしまったらしく、頭を雲の上に出し、四方の山を見下ろして、雷様を下に見る日本一の富士の山に雪はなかった。

一週間の延期でどれだけの人が集まるだろうと心配したが、9時の集合ではなんと35人と犬1匹である。犬の名前はアズ。まだ人慣れしていないが、誰にも可愛がられる犬である。

東は栃木、東京、西は名古屋、北は長野市、さらに新潟に近い飯山からである。飯山の秋山郷はまもなく雪の季節を迎えるだろう。

芝川漁協が全面協力で、この日のためにニジマスを放流してくれた。最大で70cmぐらいのもいるそうで、さらにドナルドソン系とか、ピカピカ系などで、残リマスも入れれば数は多い。

例により講習を受ける人と釣り大会に参加する人に分かれる。大会といってもいつものように大物1匹の長寸で、それも自己申告である。証拠の写真もいらないゆるいルールである。

今回は1mのニジマスを釣った人にはシマノから12月発売予定のPackテンカラを賞品に出すことにした。50cmを2匹でもダメなので、絶対無理な冗談賞品である。

講習を受ける人は5名である。ご夫婦で参加される人もいる。キャスティングを見ただけで奥さんの方が腕が良さそうで、案の定、実釣でも奥さんの方がたくさん釣ったようだ。

実釣は私とロックンローラー藤原さんの講習である。どこを攻めるかであるが、なんと言ってもこの増水である。ポイントの説明のしようもない。立ち込みすぎると流されてしまう。

足の短い人は要注意である。平○さんはアッシーのトオルちゃんと参加した常連の女性であるが、足が短いので太平洋まで流されるかもと本気で心配していた。

そんななかで、藤原さんがここに立ち、ここを攻めると実釣解説である。さすがに長いテンカラ歴だけあり的確である。

いつもは赤いトランプキャップであるが、さすがにロックンローラーだけあって、この日のためにヘアムースを一本使った芸人「みやぞん」みたいなヘアスタイルにしたので、この日はキャップは被れないだろう。

この朝は今年一番の冷え込みと、増水で魚の活性はほとんどない。魚は流れの緩い、アシぎわ、岸ぎわに寄っているだろう。そんな中で、トオルちゃんが55cmを掛けて、俄然、皆さんやる気になる。

平○さんもピカピカの40cmを掛ける。問題は取り込みである。なにせ足が短い上に、この増水である。自分では取り込めないので、あっちに、こっちにという指示の末に、やっとネットインである。

これが本当の掬(すくい)の神である。私には掬いの神が来なかったことを最後に体験することになる。

昼近くなった頃、水が少し落ち水温もあがったようだ。魚の動きが大きくなる。あちこちで、魚がいる、動き出したの声が。午後から少し釣れるかもの予感がしたところで終了、表彰である。

優勝はオトルちゃんの55cm、2位が50cmの僕クボの久保さん、ご夫婦のご主人など。次に掛けたけれどバラした人、さらに遠方から来た人などの順で用意した賞品が行きわたる。フジノのストレートラインが一番人気だったので、次回はたくさん用意しよう。

増水さえなければこんなハズではない、自分の腕はもっといいという声が多数あったので、来年3月にも春の芝川イベントを開催することを満場一致で決定した。

午後からは私も釣りに専念した。放流ニジマスはどうすれば釣れるか。結論は人の使わない毛バリ(と言えるのかも含めて)を使うことである。

なにせ大勢のテンカラマンがとっかえひっかえ毛バリを流す。すぐにすれて、フン!と見向きもしない。そこで、とっておいたとっておきの毛バリの出番である。この日の私の毛バリはエッグである。

魚の本能だろうかエッグには反応が強い。私のエッグは百均エッグである。百均の手芸コーナーにエッグサイズの丸い玉がある。いろいろな色があり、おおむね100個入っている。これにハリを通し、接着剤でハリ軸を固めるだけである。1円でできるエッグである。

しかし、魚は底にしかいない。そこでエッグの上20cm程度にガン玉をかます。餌釣りの要領である。こんなのテンカラじゃないという人には抵抗があるだろう。

要は楽しみ方なので、これで釣れるなら、これもありである。もちろんオフシーズンだけでありオンシーズンはしない。

ハリスは・・。なんと太いので1号しかない。しまった。これはヤバイかも。また持って来なかった。大きなニジマスは太いハリスでないと。しかもこの水量である。何度経験しても忘れてしまう。ボケの始まりかも。

なんとかなるだろう、は甘かった。2匹連続してバラシである。ウンもスンない。よし来たと竿を立てた途端に走られプッツン、パッツンである。

これは困ったぞ。そこで1号を2本撚りにしてハリスにする。これならなんとかなるだろう。案の定、切られることなく取り込めた。自分で取り込んだのはなく掬いの神の西尾さんのおかげである。40cmくらいのピカピカニジマスである。

仕掛けも絡んだのでハリスを1号に戻した。もう十分だ。もう釣れることもないだろう。神奈川の小倉さんたちと、ではまたの挨拶を交わした後、まてよ、この流れ の魚はまだ百均エッグを見ていないだろうと、ポイントを変えて流したその一投目にガツン。

来たよ、来たよ。これはデカイよ。底にへばりついてのっそり動く。走らないのはデカイからだ。底を切るように竿を立てるが重い。その頃には周囲には数名のカメラと西尾さん、大将が掬いの神でスタンバイである。

サイズは55cmを越えているだろう。ハリスは1号。ハリスを持てば一発で切られる。かといって水の中には増水で倒れたアシだらけで、ハリスが絡めば切れるだろう。2号をなぜもって来なかったのか。2号なら強引に寄せることができる。

掛けてから数分である。あっちに寄せて、そっちに向けてを繰り返す。下流の掬いの神に誘導するが、ともかく重い。頭があがらないのだ。重い奥さんに頭があがらない我が家のようだ。こういうときハリスが太ければグイと上げることができる。頭があがれば水の抵抗で身体が浮くのでその瞬間に掬うことができるのだが。

二人が待ちかまえているタモをすりぬけ、下流の瀬に走られる。なんとか着いていくが、ついにその時が来た。パッツンである。バレたぁーー。

ふと、気配がして後ろを見ると、ビックツリーの大木さんがいるではないか。そうか、昨年の秋、この同じ場所で大木さんが掛けたとき、バラセコールを先導したのが私だったのだ。聞けば大木さんは心の中でバラセ、バラセコールをしていたそうだ。大木の呪いである。やはり、そうだったのか。今度は釣れたときにはキャッチ、キャッチコールをすることにしよう。

大物ニジマスは2号が必需。今回、1.2号でもウンスンの人が多数。来年の3月はアマゴがメインになるが、50オーバーの残りマスもいるのでハリス2号を忘れないを教訓にしよう。

北の安曇野通信

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