やりました天竜川の53cm

 

今年の天竜川本流は好調とのこと。ではと3月1日、アングラーズパラダイスの山本さんに長野県駒ケ根の本流を案内してもらった。風もなく暖かだが中央アルプスの山々はまだ深い雪の中である。登山もする山本さんの話では、それでも今年はというか、今年も雪が少ないそうである。

年に1回、本流で竿を出し、今年で3年目の3回目である。なんとしても釣りたい。このあたりの川幅は40m〜50mあるので短い仕掛けでは太刀打ちできない。

仕掛けはシマノ本流テンカラNPにレベルライン3号を6m、これに2.5号のオレンジのレベルラインを1m、ハリス1号を1mで全長8mの仕掛けにした。毛バリから30cm上にオモリをかませる。オモリは流れの強さと深さで換える。

毛バリはルアーフックに黒い毛糸をクルクル巻いて、これに孔雀をかぶせて巻いた黒川虫モドキである。地元ではざざ虫毛バリ。この時期はざざ虫が多い頃で、郷土食のざざ虫を捕る人もいるので最強に違いないと前夜、クルクル巻いた。

案内してもらった場所は川幅が40m以上あり、一見するとどこもポイントに見える。しかし、流れをクロスすれば広い範囲を探れるが、仕掛けが軽いので下流では毛バリが浮いてしまう。

この季節、水温は4℃である。魚の活性は低く、毛バリを激しく追うことはないだろう。底でしか、さらに目の前に来たのしか食わないだろうという判断で、流れの筋に沿って平行に流す。

ラインをたるませながら、ここまでたるむと底石に当たるから、ここまで張れば毛バリが底スレスレに流れるだろうと。

川幅が40mあることは、逆に幅が広すぎてどこの筋を流せばいいかわからないことでもある。底石、深さ、流速をもとに絞る。筋が違えば食わないうえに絶対的に魚の数は少ないから、魚に出会う確率は極めて 小さいだろう。

運のみかもしれない。集中力を切らさないように、かすかなアタリに期待して40分。ラインが微妙に止る。合わせる。ガッ! よし来た! 竿がグンとしなりラインが一気に直線になる。

山本さんに声を掛ける。河原に緊張感が走りモードが変わる。来た! 来たぞ! 運に期待するしかなかった魚がハリスの先にいる。

竿を上流に倒し、長期戦に備える。歳だから下流に走られたらヨタヨタしてついて行けない。粘るしかない。焦るな。疲れるのを待て。竿の張りからみて40は超えているだろう。45はあるかな。

魚を上流に向け、強く引かず、ゆるめずで耐える。3分ぐらいして魚がシビレを切らし、沖に出ようと一瞬浮いた魚が見えた。ピカピカのニジマスだ。山本さんから50cmオーバーの声。尾びれがでかい。

糸鳴りがする。ビーン、ビーンの糸鳴りを聴くのは久しぶりだ。5分が過ぎた。心配なのはハリスが1号なことだ。長期戦になると歯で切れるぞ。焦るな、粘れ、疲れるのを待て。心の中で繰り返す。

少しづランディングの態勢に入る。どこで取り込むか。山本さんがネットを持って待機している。砂地の岸に寄せたいが、そこには枕大の石がある。山本さんが石を取り除いてくれる。これでランディングできるだろう。魚がフワッと浮いたところを掬ってくれた。

やったぁ。フッキングから7分ぐらいかかったろうか。山本さんとがっちり握手。山本さんがいなければキャッチできなかった。感謝である。

53cmの体高の高いニジマスだ。身体はみっしり引き締まりズシリと重い。3年目、3回目にしてキャッチした私の天竜川のトロフィーである。

振り返れば運がほとんどだった。季節、場所、水況、流す筋、切れなかったハリス、数少ない魚。これらが運よく重なってフッキング。

そこからあわてずに冷静に対応できたのは昨年、阿寒川で50オーバーのニジマスを何本も取り込む経験を重ねたことが活きている。魚に主導権を取らせないあしらいである。

1匹釣れば満足である。数少ない魚なので続けて竿を出して釣れるものではない。

早い昼ごはんにソースカツ丼が名物という伊那市の「志をじ」に行く。観光客向けではなく地元の人が通う店とのこと。地元のフライマンの牧田さん、鈴木さんが加わり4人の昼飯。

カツの大きさが半端ないとのこと。男でも中盛でゲフッとなるらしい。大盛りは無理だと思う、とのアドバイスにますますやる気が出て、大盛り(1500円)を注文。

本当に半端ないボリュームである。スマホの厚さの2倍の肉にコロモがついている。これが大盛りご飯の上にスマホ3つと半分乗っているようなものである。当然、ドンブリもでかく、一見すると錆びた鉄兜みたいである。

当然、完食。当年とって還暦がペロリなので皆さん驚く。ソースカツ丼の味はいい。とくにご飯にしみ込んだタレの味がいい。ただ、1キレ食べるのも7キレ食べるのもまったく同じ味というのがどうも。

カツ丼なので豚肉しか使えないのだろうが、牛、鳥、魚、マトンや地元は馬刺が名物なので、馬肉などのバラエティがあればと思う。名付けてソース肉丼。

味をしめて天竜川でまた竿を出すかと言えば今シーズンはタブン出さない。次はボウズになるのが予想できるからだ。それほど運に恵まれた。

今シーズンの運を使い果たしたか? いやいや初めよければ終わりよしでいいシーズンになるか? いいシーズンになるだろう。ソースカツ丼を完食したので、ドーンとカツから。ソースね。