秋の芝川イベント

 

静岡県には10月一杯までの渓流もあるが、ほとんどが9月末で禁漁。禁漁から1週間でウズ。2週間でウズウズ、3週間たつと手が震える禁断症状が出て世間に迷惑かけるテンカラマンが多いので、ではということで10月23日(日)に富士宮の芝川 に集まる機会を作った。

私が東に向うと決まって雨になることになっているが、この日は奇跡的にまだ雪を被っていない黒冨士がふもとからすっきり見える好天だった。誰だ雨男と言うのは! 

ところがカラッとした晴天が昼になり、午後になるにつれて雲が厚くなり、上がりの5時前には雨が降り出し、遅ればせながら、やっぱり雨男を証明したのだった。

集合の9時に27人。その後、遅れて10人集まって都合37人と犬2匹となった。 馴染みの顔、久しぶりの人、今日が初対面のニューフェースやニューハーフ。東の遠くは栃木県、東京、北は長野県の諏訪、西は名古屋からと重い症状のテンカラマンが集まった。

遅れて参加した愛知の3人は三菱自動車であるが、このたび日産の傘下になることが決まったので「日産の皆さん」と声をかけると、皆さん嬉しいようだった。やっぱりそうなのか 三菱・・・。やっちゃえ日産、なっちゃえ日産。

芝川の特別区は川が個人所有の禁漁区という理解しがたいことになっているが、今年は更に禁漁区が上流に広がるという更にわけのわからないことになっていた。

漁協が放流した魚は下流の禁漁区に下るだろう。となるとその魚は川の所有者のものになるのだろうか。川の所有者は釣りをしていいのだろうか。

釣り大会は大物1匹の長寸で決めるがサイズは自己申告。写真があればいいが、なくても構わないゆるいルールである。60cmクラスのニジマスが放流されているので、そのサイズが優勝かもしれない。

講習会を受ける人以外はそれぞれ思い思いの場所で竿を出す。今回、講習会をうける人は6名。最初に顔は怖いが心はやさしいリーゼント藤原さんのキャスティングデモである。

その後、一斉にキャスティング練習。無州、藤原、私と3人のレッスンなのでメリメリ(どこかで竿にヒビが)、メキメキうまくなる。

その後、実釣講習。最初に簡単に3秒、3回の私の散々の法則のデモをした後、1人の講師に2人というマンツーツーのレッスンである。これでうまくならないはずがない。

さて、釣り大会の方はと言えば、時々、竿が立つ。釣れれば尺から40cmオーバーである。ときどき50cmを越えるので0.8号のハリスはプッツン、プッツンである。

この特別区は上流1.5kmまで釣り場だが上流に行く人が少ない。行った人には野牛田島の守のように午前中だけでツ抜けして、野牛だけにモォーすっかり満足して 、午後はフ抜けになった人もいた。

表彰式。自己申告で1位は55cmの諏訪からきた新村(にいむら)さんである。新村さんは高原川のC&R区間がフィールドでここだけで年間1000匹は釣るという腕の持ち主である。

2位は54cmで、はるばる栃木から参加した人と、タイガ君である。それぞれ用意した景品の中から好きなものをとってもらう 。タイガ君はまだ19歳と若い。夕方まで粘り、さらに最上流で54cmを釣って写真を送ってくれた。

私も少しだけ竿を出す。一時は気を入れて集中して竿を出したが根気が続かない。テンカラマンが入れ替わりたち替わり、あの毛バリ、この毛バリを見せている。

こういう時はまだ見たことのないハリがいいだろうとチュウインガム? 赤いトラウトガムをミミズの長さに切った毛バリ?でクイクイ誘うとガツン。

水底でキラキラ光る。なんだこれ? 次第にピカピカが強くなる。まぶしい! このピカピカはひょっとするとさては天然アマゴか。取り込んだのはヒレがピンとしたホウライマスのピカピカである。こんなのもいるのだ。

豊橋の村松さんの上司は今日がテンカラ初日である。さすがにこれだけの人ではままならない。「今日は特別です、キャスティングは上手いので来年、自然渓流なら簡単に釣れます」と慰め、激励を言ったのだが、なんと45cmを掛けた。

最初の魚がニジマスの45cm。しかも流れに乗られたのでどうしたらいいかわけがわからない。ああしろ、こうせいと外野のアドバイスで無事キャッチ。すっかりテンカラウイルスに感染したので、来年になると、今度どこに行くと村松さんは催促されるに違いない。

集中といえば小田原のビックツリー、大木さんの粘りはすごい。大木さんとは十数年ぶりの再会である。歳を重ね、風格にもテンカラにも余裕が生まれていた。

午前中に、足場にしていたオオキ石で数匹の40cmオーバーを掛けている。午後も同じオオキ石に陣取り、ひたすら、飽きることなく川の中の大木となって毛バリを振り続ける。ときどき毛バリの近くでバシャっとライズするが、毛バリではなく何かの餌を食っているライズである。

目の前で50cm、60cmがバシャっとライズするので更にヒートアップ。私はすっかり諦めて土手の上から観戦することにした。大木さんの毛バリの近くには60オーバーの黒い影が沈んだり、浮いたりしている。

時間は4時を過ぎた。この頃に地合が来たようだ。魚が浮いてきたのがわかる。無州さんが掛ける。大木さんの仲間がアマゴをかける。

そろそろ食うぞ。魚が浮いた。バシャと飛沫が上がる。大木さんの竿がガッと立つ。やった!

魚はでかいド。必死に竿を立てる。その時だ。「バラセ、バラセ」のバラセコールが土手から起こる。バラセコールにも耐え、必死に寄せに掛かる。50cmオーバーだろう。耐えること42秒で竿を倒し、ラインを掴もうとする。もう少しで掴めるというその寸前にパラッとバレル。

土手からはバンサーイ、バンザーイの三唱である。大木さんは、オオキニと言いながら、土手の連中に中指を立てて終了となった。小指だったら、私これでテンカラを辞めますの合図だったが。小指で辞める。これがなんのことか知らない人が増えた。

知らないと言えば「秋の日はつるべ落とし」。あっという間に川面が暗くなる。つるべと言っても今は誰も見たこともない死語、化石語、骨董語である。現代なら秋の日はバンジージャンプ落とし。

芝川特別区は冨士山の湧水が水源で水が温かなので終年釣りができる。禁断症状の人で、大物と綱引きしたい人におすすめである。今回は多人数なので数は出なかったが、貸切状態なら竿が心配になるくらい釣れるだろう。

 

無州さんのブログにもアップされてます。