オフテンの過ごし方

 

オフテンその1

禁漁になって2ヵ月が経過。当地では2月から解禁なので、禁漁も折り返し点を過ぎた。あと2ヵ月である。

一年中、テンカラをやりたいテンカラ依存症なのでシーズンオフもテンカラ。これをオフテンと呼ぶことが『現代用語辞典』(冗談社)に掲載されている。

管理釣り場が中心になるが、ともかくバカバカ釣りたいときには長野県の平谷湖フィッシングスポットである。ある日の午後、テンリュウの塩爺と上州屋のカメ仙人、飯田の桜井さんと集まった。標高950mなのですでに紅葉は終わり、冬を待つばかりである。

今シーズンからテンカラも全日OKとなったが、なにせ平日なので釣り人は両手があれば数えられる。

スポットを囲む山が高く、午後1時なのに陽のあたる湖面がわずかで、そこなら暖かいだろうと陣取るが、それも2時を廻るころには山の陰となり冷え込みを次第に感じるのであった。

ポンドの釣りはスレた魚を手を換え、品を換えて釣ることに面白さがある。食いそうで食わない魚が食った瞬間を見て掛ける。

毛バリをいろいろ試したがこの日は14番〜16番サイズの普通毛バリがアタリだった。沈ませてもダメ、大きな毛バリもダメだった。

背中からの風に乗せて、毛バリを水面にホバリングさせると水面に全身を出して食うとか、毛バリをユルユル追う魚を見て、俺が食う!と下から食い上がるのが掛かるなど、いつものパターンながら、楽しいオフテンの過ごし方その1である。

4時になるとペレットを撒くので、バシャバシャする中に毛バリを落とすと掛かるのもお約束である。

このタイミングでなぜ掛からないんだ? 魚のステージが変わったのかと深読みしたが、単にハリが折れていただけで、これを2回やるところが歳かもネギ。

4時半に上がる。カメ仙人は着ぐるみマトリョーシカ状態であるが、私はそれほど寒くない。気温は1℃だった。

テンリュウの塩澤会長に会うのは昨年6月の北海道以来である。85歳にしてますます元気である。言語明瞭にして記憶力抜群。85歳にしてタブレットで写真をとり、その場でFace bookにアップする。Face bookを止めた私からすると、超人である。

桑原玄辰さんの「桑原山雨」を見せてくれた。これは「つるや」の時代 の会長が造った竿だという。

桑原玄辰さんと言っても若い人は知らないと思う。『毛バリ釣りの楽しみ方』をはじめとして数冊の著書を残している。山本素石さん(と言っても知らない人も多いかも)と同時代のテンカラをリードした人である。

グラスの3.3mで独特の巻きグリップ。当時のグラスロッドの最高級品である。桑原さんはグリップとロッドのつなぎ目をもち、グリップが腕に当たるように振り込むキャスティングだったのを記憶している。

 

オフテンその2

豊田市の家から1時間に野原川マス釣り場がある。ここは約2.5kmの自然渓流にニジマスを放流するもので仕切りがない自然渓流なのでオフでも渓流のテンカラを味わえる。

2500円を払うと7匹ぐらい指定した場所に放流してくれる。30分ぐらいすると水になじむので毛バリを追うが、面白いことに2〜3匹釣るとピタッとアタリがなくなることである。

このオフに行った3回の釣りとも同じである。一緒に遊んでくれるニッシー西尾さんもまったく同じ反応。おそらく魚の中におっちょこちょいな奴がいて、真っ先に釣られてしまうのだろう。

それを「バカめが!」と言いつつ、ジッと見ている頭のいい奴がいるのだろう。人間のように。

仕切りがなく、釣り人がいなければどこに入ってもいいので、残りマス狙いで楽しめる。10月に行ったときにはまだ活性が高かったのでバカバカ釣れた。12月の今年最後のテンカラはここになりそうである。

 

オフテンその3

三重県員弁川(いなべ)である。大型のニジマスが放流され、ピカピカの残りマスがいるので大物狙いであるが、正直難しい。今年は放流ボランティアの日と、勝手に「員弁川友の会」のメンバーの忘年会の翌日に竿を出したが2日ともウンスンである。

ウンがなければスンもない。放流されたニジマスは少なく、川は大きい。放流されてから日を追うごとに散るのでどこに魚がいるかの情報がないと、ウンもスンもない日となる。

さらにその日の活性で魚が浮いていたり沈んだり。それにマッチした毛バリの選択も間違えるとさらにウンが尽きる。

ここに魚が絶対にいる→いるだろう→いるかもしればない→いるだろうか→いないかもしれない→いないな→絶対いないの心の螺旋階段を経験する。

数回、この螺旋階段を登ると疲れてしまい、いきなり、いないかもしれない→いないな→絶対いないとなって、川に石を投げ(投げません)、バカヤロウと言って帰ることになる。釣れないと根気が続かない。

テンカラと建築の清水さん、清水さんの倍は釣るTカメラマンのように、ここに通いつめなければいい釣りはできないだろう。

ということで今年のオフテンの候補地からオフである。