管理釣り場の○秘釣法(おわり)

 

今日は3日目、最終日である。札幌から定山渓温泉を過ぎて中山峠を越える。峠にさしかかるにつれ木々の葉は黄を濃くし、紅葉の季節が近いことを告げている。あとひと月もすれば湿った初雪が葉を落とすだろう。

中山峠を下ると右手に羊蹄山が見える。ふもとからのなだらかな曲線が山頂になるにつれ立ち上がり、平野の真ん中にあることもあってどの方角からみてもコーンのような円錐形となり、富士山に似たバランスのいい傾斜が蝦夷富士と呼ばれる所以であろう。

この頃からまたも雨である。雨男なので仕方ないが、嵐を呼ばなかっただけでよしとしよう。皆、寒い!と重ね着であるが、私だけ半袖でちょうどいい。

今日の目的はビックファイト松本でビックなニジマスを釣ることである。やがて車は管理棟に着く。ここは松本ファミリーが一家で経営しているとのことである。

ガンジーはここの釣り場のメンバーカードを持っている常連である。北海道ではここだけで釣るらしい。

前日にガンジーから奥さんはビックママと呼ばれていて凄い人と吹きこまれていた。ビックなママで松本。うん? ダンプ松本か? マツ? マツコデラックス?

おそるおそる管理棟に入ると小柄な女性が。彼女がビックママ? ビック松本のママなのでビックママ。なんだそうなのか。期待半分だっただけに肩すかしである。

この日は雨とあってすでに室内は暖房ガンガンである。暑い。すぐに汗が額から滲みだした。簡単なルールを聞いてから、暑くてとても入っていられないので、飛び出るように管理棟を後にする。

さあ、釣りだ。ここはいつもはテンカラは禁止。今回は残間さんの口ききで特別に許可された。

広大な敷地の中に大小7つのポンドがあり、そこにニジマスがいる。いるというのは放流したものではなく、すべてポンドで自然産卵したものらしいのだ。

ニジマスは大きいので90cmぐらいのもいるという。HPには現在のロッド破損数260本、リール破損数114個と書いてあるので、でかいのが掛かるとバキバキに折られ、リールはクラッシュするのだろう。

この日は日曜にもかかわらず釣り人は少ない。どのポンドも貸切状態である。一番上の池から釣り下ることにした。

いるいる。底まで見えるくらい水は澄んでいる。でかい。でかいのは70cmくらいあるだろう。50cmはざらである。しょせん管理釣り場のニジマスだ。もーらい。ちょろいもんだ。

水面を誘うといいということで12番の毛バリで水面スイスイ。ところがフン! 見向きもしない。完全に見切っている。なんぼのもんじゃい! 偽もんちゅうことはとっくにわかってんがな。本物を出さんかいな。口には出さないが態度でわかる。

毛バリを底まで沈めて、底から浮き上がらせる潜水艦釣法にもフン! ペレットを食っているので水面にペレットが落ちるように毛バリでピチャピチャ叩こうがフン。ホンモンを出さんかい! 怒るで!

ならばとイクラ毛バリはどうだ。管理釣り場で最強のオクトパスもダメ。あれもダメ、これもダメ。

明らかにハリスを見切っている。ハリスがあるとそこを避けて泳ぐ。このポンドで自然繁殖した20cmくらいのは掛かる。これは困った象さん。

ムッシュもガンジーも打つ手なしで、すでに2時間が経過した。ポンドを換えても同じである。連日の雨で水温が下がり、さらにこの日も小雨模様ですべてのポントで活性が上がらないからだ。

これで陽がさして、水温が上がればこんなことはないだろう。しかし、我々の予定はあと1時間しかない。これは困った象アザラシである。

そこにである。お助けマン登場。なんとビックフッシュ松本の息子さんが毛バリのあるあたりにペレットを撒いたのだ。

ペレットをめがけてビックなニジマスが一斉に群がる。それをみて、あちこちから寄って来る。水面が盛り上がり、しぶきがあがる。魚体がゴツゴツ押し合い、へし合いしてベレットに群がる。

ラインがスッと引かれた。食った。狂乱のモンテカルロ状態なのでペレットも毛バリもみさかいなく食ってしまうのだ。こういう○秘釣法があったのか。

今度はガンジー、ムッシュさんにと順にペレットを撒く。絶対に釣れる。これをほぼ三順した。

釣れるのはとても管理釣り場と思えないヒレピンでピカピカだったり、鼻がしゃくれかかったオスなど。ともかくすべてのヒレがピンとした健康体である。

当然、取り込むまでに時間がかかる。この日は本流テンカラNPの他に、さらに超本流竿のテストもあったのでペレット大作戦のおかげでミッションを達成することができた。

この○秘釣法がなければ時間内では釣れなかったろう。ちょうど我々がポンドを後にする頃は陽があたり水温が上がったようで、そこかしこで竿が曲がっていた。

ほっと一段落したところで今日の昼はジンギスカンである。まず、ラムから始まりマトンになって最後はウドンのシメである。残間さんとみずきさんが手際よく作ってくれる。肉はほとんどオーストラリア、ニュージーランド産のようだ。

北海道の人はバーベQが好きらしい。桜の花見にバーベQ、海に入らず海岸でバーベQするのが海水浴らしい。ことあるごとにバーベQ。こちらなら夏のバーベQは灼熱地獄だが、涼しい北海道なら夏のバーベQは定番だろう。

管理釣り場の横の尻別川の源流部で軽く竿を出す。そして支笏湖にそそぐ美笛川で最後の竿出しである。魚はすでに支笏湖に落ちたようだ。支笏湖を回り札幌に戻る。

最後の夜を市内の居酒屋で。ゲフッとなるまで飲んで、食って、え?こんなに安いの。北海道の美味くて安いを腹いっぱい堪能して、ゲフッとなりながらも、シメにSeico martで甘いものを買って、食った食ったで夜が更けていった。