如月7日は愛知県寒狭川(かんさがわ)中部漁協の解禁日にて、西は名古屋から、東は浜松近在の和式毛鈎師たち多数集まれり。
ところは寒狭川本流、広見ヤナ前なり。この区域は毛鈎師、金属匙師のみ許された専用区域ゆえに餌師おらず。
天気晴穏なれど、すでに杉花粉舞散りて当方の目はバチバチと痛し。わずかなれど頭が頭痛なり。あれもこれも花粉症の症状にて候。
当方、朝方10時より毛鈎を振りしが、魚の姿、絶えて見ること無し。毎年、例年、魚影少なくなりしが、今年ほど少なきこと今だかってなし。
毎年、鮎の売上げは落ちて候。昨年はさらに落ち込み、資金なきが故に多数の雨魚の放流をばできなかったとの噂あり。寒狭川中部、お前もかとシーザーの心境なり。
噂どおりに洋式毛鈎師、金属匙師ともども竿が立つことまれなり。
ヤナ前の浅瀬の対岸で、川の中の杭となりてテンカラ毛鈎をば振りしご仁のみ掛かれり。その数、参拾余匹を越えたと推量す。
道糸は水平線をば用い、投射技術うまく、熟達の師と憶えしが、当方の知らぬご仁と見受けたり。昼げも食せず、放尿もせず、ひたすら毛鈎を振るも見事なり。
昼げをば馳走になり候。咖喱、ひき肉挟み西洋パン、肉鍋、猪肉メンチカツ、浜名湖天然牡蠣など当方の好きなものばかりなり。当方からは家内の作りし葡萄パンをば持参す。
集まりし和式毛鈎師、およびその家族、および犬1匹あわせて弐拾余名。うち釣りするもの
壱拾余名なり。釣りせぬもの、ただ解禁を祝うだけに集まれり。
およそ毛鈎師とは思えぬご仁もおれり。リーゼントに整髪し、黒眼鏡を掛け、恐ろしげな顔なれど心はやさしいF氏を初見したものたちは、逃げまどい、恐怖におののきとは当方の悪ふざけ
にて候。新人に投射練習を教え、見事な投射技術をば披露す。
昼げの後、ふたたび毛鈎を振りしが、すでに釣師の数少なし。あまりの貧果に早々と退散したりと思えり。
当方、いまだ魚の姿を見ていぬが故にぜひとも顔をば見たし。
浜名湖黒鯛名人、鮎名人、かつ、おなごを釣らせたら右に出るものおらず、左に出るもの当方だけというH氏の見事な毛鈎箱から紐毛鈎を弐本頂戴し、心強くす
。
紐毛鈎の元祖は当方と思いしが、ここのところその威力はとみに落ちたがゆえに巻いておらず。かような貧果の折には頼るもの、紐毛鈎においてなし。
H氏は天龍赤竿でまたたく間に数匹を釣りぬ。当方もその隙間をぬってやっと壱匹。さらに壱匹くわえて、花粉症の両目が開いたところで竿を納めぬ。
すでに花粉が舞い散り、我家に着く頃にはバチバチ目にして涙目なり。つくづく当方の目がパッチリ大きいことをうらむ。
これから五月の末まで続く花粉症に悩まされるかと、深く嘆息して花粉の空を仰げばつらし我が師の恩。
されどテンカラの季節が始りし嬉しさで、花粉の憂さもまぎれる解禁日なり。 |