行く夏を惜しむバーベQの夕べ

 

長野県開田高原はもうすっかり秋色だった。大学の毛バリ巻き公開講座参加者が集まってプチビラMTおんたけでバーベQの夜である。

夜は10℃近かっただろう。もう夏も終わったとばかりにフリースを着る人もいる中で、ただ一人半袖と雪駄履きがいる。暑がりジェイソンこと、私である。全然寒さを感じない代わりに、 真夏は息をするだけで汗が出る。

バーベQのために釣った魚を少しキープするようにお願いした。なんとジャガー加藤さんが泣き尺のアマゴを。釣ったとき喜びの余り「これでテンカラ大王を越えた 」とほざいたとか。マグレに決まってる。マグレですが、ほざいてません。

飛騨牛の焼肉もうまいがイワナも美味い。イワナを食べるのは何年ぶりだろうか。炭火でじっくり焼いたイワナは骨まで食べられる。これまですべてリリースしてきたが、こんなに美味いなら年に1回ぐらいはキープして食べることにしよう。今回もゲ フッとなるくらいに食べ、開田の夜は静かに更けていった。

今回はニッシーさんが自作の和竿の試し振りである。器用なのでタモ作りをはじめ、竹竿にも手を染めたが、悪いことには手を染めていません。

3本つなぎで3.2mである。グリップは竹。振らせてもらったが多少重いものの調子はいいし、竿の曲がりのクセもつかない。これが2本目とのことなので、2本目でこんな竿を作るとは竿作りの師匠である郡上のドクター市橋さんを越えた。

折れる不安を感じない。これまでの師匠の竿は骨折の心配があった。合わせで折れ、尺イワナの取り込みの途中で折れた。竿が簡単にポキッと骨折したので 「先生、骨が折れました」言ったら小児科医だけれど診療科を外科に換えて骨折の治療もしてくれた。

ニッシーさんと私のG2(爺さん二人)にふさわしい川はどこかないか。ありました。高低差なし、集落の中、道の横を流れる小さい沢である。 これまでこんな小さい沢で竿を出したことはない。見ただけでパスしてきたのだが、寄る年波を考えるとこういう遊び場の開拓も必要だろう。

川幅は狭いところで50cmである。大きな魚ならUターンできないくらいの幅なのだが、なんと魚は小さいけれど一杯いる。底石がびっしりなので魚の着き場と餌があるのだろう。

リリースの繰り返しだが結構遊べた。バーベQになるアマゴを2匹キープしたのでのでまずまずだった。今回、徘徊老人のようにあちこちさ迷ったが、2日間を通してここが最も釣れたのだ。

こんな小沢でも釣りになることがわかると、どこでも竿を出せるように思える。なぜこの小沢がよかったかと言えば上が開け、左右にブッシュがなく短い仕掛けながらストレスなく振れるからだ。

というのは、バーベQの翌日、おんたけの鈴木さんの案内で源流へ入った。途中から斜度45度の林間を、ゼーゼー ハァーハァー。「鈴木さん、ゆっくり行ってください。待ってちょぅ!」

大汗をかきながら下りた沢は水は澄み、苔むす石のすばらしい渓相 。フライなら長い竿でも2.4mぐらいなので、キャスティング次第では釣りになる。事実、フライマンはここでいい釣りをするらしい。

ところがテンカラでは毛バリが思うように振れないのだ。毛バリまで3.5mの仕掛けでも集中力を欠くとすぐに引っかかる。

G2苦戦。それでも根気のあるニッシーさんは小さいながらもイワナを4つ。水温9.5度と活性がなかったので粘り勝ちである。私は当然ボウズ。もう帰ろうよ。

誰もおらず、ストレスなくブンブン毛バリを振れるところで、しかも車を下りて1分で尺アマゴが釣れるところはないものだろうか。