フライからテンカラへ

 

フライマンからテンカラに転向する人が増えている(ように思う)。フライ用具の中古が増えているらしい。

フライは長い歴史と伝統のある釣りである。フィールドに対応したロッドとキャスティング、生態からみた餌の分類と、それに似せた毛バリのタイイイグなど、あらゆるものが研究と研さんの対象である。奥が深い釣りで、それだけにキャスティング、タイイングなど、それぞれの分野の楽しみ方も深い。

それに対して、テンカラのタックルはシンプルで、キャスティングは簡単。竿は1〜2種類あればよく、毛バリにしたって一言で「虫」らしいもので十分なので、とっつきやすさは断然テンカラに分がある。

当然、フライにもテンカラにも長所もあれば短所もある。テンカラにはテンカラのよさがある。フライに活かせばフライの楽しみの幅が広がるように思う。テンカラの方が、いやフライの方が優れているなどと比較することに意味がない。楽しみ方に優劣はつけられないからだ。

最近、フライもやるけど、テンカラもするという3人組と一緒する機会があった。フライとテンカラがほぼ半々で、最近ではテンカラの方がやや多いという3人組である。

うまい。テンカラのキャリアも長いので、テンカラの長所である、ピンスポット狙いがよくわかっている。餌でもフライ、ルアーでも攻められないテンカラならではのスポットを3秒、3回のテンポで狙う。粘ることなく見切りがいいので、3人ともよく釣る。

Mさんはこの春からテンカラ。私の講習会に参加してから3の3を実践している。よく釣るのだがアタリがわからずピックアップしたら掛かっていることが多いという。

たしかに打ったら、3秒待たずのピックアップなのでテンポが速い。速すぎる。ラインや、魚の動きというアタリが出る前にピックアップしてしまうので、アタリがわからないのも当然である。もう少し流してみたらというアドバイスで的確にアタリがとれるようになった。

3人ともドライフライのときの、毛バリにバコンと出る面白さはテンカラにはないものだという。今の状況ではドライで出るな!と思うとフライロッドに替えるようだ。

フライから完全にテンカラに宗派を変えたOさんとは、昨年、ある機会で私と知り合った。知り合ったその日にOさんの前でガツンと釣ってみせたので、即、脳感染した。その日からテンカラに宗派を変え、フライのタックルをすべて売り払ってすっかり身軽になって再会した。

まだテンカラのキャリアがないので、フライのときのクセが抜けていない。見切りが悪い。そこはもう出ないというポイントでも、何回も流す。フライのときは粘って何回も毛バリを変えることで、それで出たこともあったので粘れば出るかもしれないと思うようだ。

誰でも狙うポイントしか流さない。フライのときは、システムからそこしか流せなかったからだ。まさかそんなとこ、あんなとこがポイントとは思っていなかったようだ。2日間の完全密着で、さらに腕をあげた。もうフライには戻れない。今後はテンカラの普及に勤めるとのことである。

フライの人の中でテンカラに興味を持っていても、テンカラを始める人は少ないように思う。テンカラの仲間内をみているとテンカラが好きな人は、深く考えない、モノにこだわらなく、一言で言えばテキトーでいいじゃん、テキトーが好きという人が多いように思う。

フライからテンカラを始める人も、どちらかと言えばテキトーが好きな人なのかもしれない。少なくとも「俺はテンカラを始めたけれど、テキトーとは何を言うか、撤回しろ」などと言う人ではないように思う。

御嶽山の噴煙が悲しい。立秋の開田高原は少しづつ秋の気配。