テンカラサミット2014 in ボルダー

(5) アウトドアスポーツとテンカラ

 

 

今日が最終日。朝9時にボルダーキャニオンに集合である。ダニエルの家からわずか20分である。水色はよくないが渓相は日本の渓流とまったく同じである。

 

アメリカのことなので、全員ピタッと揃うこともなく集合写真に収まったのは10名程度で、すでにテキトーに釣り始めている人たちがたくさん。

 

半ズボンで膝丸出し、運動靴、中にはサンダルの人もいて、テンカラをなめてるのか(怒)と思ったが、これでいいのだとわかるまでに時間はかからなかった。

 

運動靴でもサンダルでも、川まで降りれるように踏み跡がどこにもついているからだ。もし、すべって事故が起きても自己責任の国なのだ。

 

下流の人から一人10分程度、アドバイスである。夫婦でテンカラのダンナは山口県の岩国基地の海兵隊だったそうで、日本大好きとのこと。それだけに積極的である。ちょくちょく釣りをするようでキャスティングは上手い。

 

ただフライの経験が長いので、上流に打って下流に流し切ることを繰り返す。そこで3秒間、3回流す「3の3の法則」でやってもらう。ちょっとのアドバイスでブラウンが。嬉しそうである。3の3の法則は「さんざんの法則」とも言うのだけれど、釣れてよかった。

 

上流で私をチラチラ見ながら待っている男がいる。35歳ぐらいか。同じところで、同じ流れを流し切ること数十回。それではダメと下流からもどかしく見ていたが、やっと順番がまわってきた。

 

彼の手をとろうとして驚いた。左右の腕がくまなく青や赤の刺青なのだ。日本ならおもわずそういう方面の人なのか、近寄らないようにしようと思ってしまうが、向こうではファッション感覚のようで、している人は結構多い。

 

テンカラ関係にもいて、傑作なのはテンカラの「ン」と「ソ」の違いがわからないとみえて、腕に「テソカラ」の刺青をしているのだ。刺青をタトゥーと呼ぶようになってから扱いが軽くなって日本でも増えたように思うが、日本ではまだ市民権は得ていないだろう。

 

彼の手をとって、3の3の法則を説明している最中にブラウンが。テンカラでファーストヒットとのことで、サンキュー、サンキューの強い握手。その喜ぶこと。間違いなく発症しただろう。怖い人ではなかった。

 

午前中はずっと講習。ランチの後、やっとフリーフィッシングだ。あと半日なので楽しみたい。移動した先は浅いチャラ瀬がつづくエリアで、車がブンブン走る道からダートに降りたところだ。

 

たくさんの車が停まっている。これみんなテンカラ? どうやらクライミングの場所のようで、どこでも岩登りをしている。その下でテンカラである。

 

そのエリアには、すでに散々、釣り人が入っているのでダメだろうと思っていた。上流50mには太ったフライマンが先行しているし。しかし毛バリに次から次に反応する。ただ毛バリをくわえない。

 

ハーン!先行者で神経質になってるな。ラインを0.6号、毛バリを16番にしたら途端に掛り出す。ほんの短い区間だが10匹は越えたと思う。全部ブラウンで最大で25cm程度である。キープは2匹までらしい。ルール違反は逮捕という厳しいペナルティがあるので誰も守るようだ。

 

魚はいくらでいて、いつでも釣れる。石徹白のC&R区間よりも魚は濃い印象である。しかも、サンダルで可能なのだ。ここでは「さぁ、テンカラだ」と構えることはない。

 

ザックに入れた竿を出して「ひょいとテンカラ」「ちょっとテンカラ」。気が向けば自転車、ランニング、クライミングができる。アウトドアスポーツとテンカラの距離が近い。構えないでできるシンプルなテンカラが好まれる理由がわかる。

 

ブルックトラウトを釣りたい、カットスロートも釣りたい。もし2種類釣ればレインボーとブラウンでグランドスラム達成である。カットスロートとレインボーのハイブリット、カットボーもいるそうである。

 

それならブラウンとレインボーのハイブリットならブラボーで、釣れればブラボー!とヘタな英語で精いっぱいのダジャレを言ったつもりだったが、誰も反応しなかった(恥)

 

さらに上流へ移動。上流はダム湖になっていて湖畔に小さい町があり、湖に流れ込む源流に行くという。ちょうど日曜とあって紅葉(黄葉)狩りの車で一時渋滞である。アメリカでも紅葉狩りをするんだ。

 

ダートには車が一杯。なんで? ここも紅葉を見ながら、ウォーキング、ランニング、自転車、クライミングの車のようだ。

 

そこの川幅は5mくらいの、日本のどこにもある源流とそっくりであった。ダムの上流とあって水は澄んでいる。ブルックがいくらでも釣れる。ブラウンがアマゴとすればブルックはイワナの感覚である。

 

ちょっと強い引きが。ブルーバックカットスロートとのこと。背中の青いカットスロートらしい。喉切りマスである。えらの下が黄色い。真赤なのもいるらしい。これでグランドスラムである。まともにやれば際限なく釣れる。

 

ビーバーダムを初めてみた。しっかりダムになっている。壊したらいけないと、おそるおそる乗ってみたが、ビクともしない造りである。ビーバーは偉い。

 

ひょっとしたら造ったのはヒゲアザラシではないか? ダムの前にいるヒゲのジョンは体型からアザラシそっくりである。

 

帰路、ダニエルがあの店が大麻(マリファナ)の店だと指さす。コロラドは今年からマリファナが合法になったそうで、そういう店には黄色のマークがあるのだそうだ。合法とはいえ、タバコも吸わないダニエルは手を出さない方がいいと思うよ。

 

ブルックを一人2匹、あわせて7匹キープして、今日のディナーはブルックの塩焼きである。ダニエルの家には塩焼き用の竹串などが用意されている。ときどきブルックの骨酒も作るようだ。

 

フェイスとマルコムを招いて塩焼きディナーである。かれらは初めてらしい。おそる、おそる口にするが、半分くらい残す。私が頭から尻尾まで全部食べたことに目を丸くし、猫の生まれ変わりのように私を見る。日本人だからね。味はイワナと変らないが、イワナほどの油っけはない。どちらかと言えばアマゴに近い。

 

今回のコロラドもいろいろな体験ができて楽しかった。また、機会があればどこへでも行ってみたい。ただし、時差ボケがなければ。

 

日本に帰ってからがつらかった。15時間の時差ボケがすっかり収まるのに1週間かかった。困ったのは、車の運転をしていて突然、耐えがたい睡魔にドスンと襲われることだ。

 

目をつむったらヤバイ! 落ちるような睡魔ととともに、手足の置き場のないムズムズ感が起きる。これは不快だった。これさえなければいつでもスタンバイである。さて、来年はどうなるだろうか。

 

終わり