テンカラサミット2014 in ボルダー

(4)熱気あるイベント

 

サミットの会場はボルダー市内のミレニアムホテルだった。スタッフにイベントコーディネーターの女性が一人加わる。コロラド大学のプロコーディネーターらしい。詳細なスケジュール表を持っていた。

まず朝食である。軽くすまそうと思ってフレンチトーストを注文する。ところが、これがボリューム満点で、しかもむちゃ甘い。 チョコレート、生クリーム、粉砂糖と甘い豆にシロップをたっぷりかけてある。甘いだけにブラックコーヒーとの相性はいい。

朝からこんな甘いものをと思ったが、まてよ、名古屋には小倉トーストがあるじゃないか。甘さではいい勝負だ。焼いたトーストにあんこを挟んだ名古屋ならではの定番だが、初めての人はなんであんこなの?と思うだろう。

今年は一般参加者が170名でスタッフ、販売業者を含めて200名とのことである。年々増えていてアメリカのテンカラが熱くなっているのを感じる。

2009年に浜松でテンカラサミット2009を開催したが、このときは168名だったのでほぼ同規模である。コロラド州外からの人も20名程度とのことである。広いアメリカのことなので州外から来るのはさぞ大変だろう。

ダニエルの挨拶のあと、日本のテンカラを紹介する。質問を含めて約50分が持ち時間である。アマゴとヤマメの漢字。アマゴには赤い点があるがアレルギーではないこと、ヤマメはその美しさから山女魚と書くが、日本では、山をやる女性に美しい人はいないと言われているというギャグは、笑ってもらえたので受けたのだろう。

テンカラは伝統的な日本のフライフィッシングであり、日本人のシンプルな考え方が具現化されたものであるなどの話をする。

質問がつぎつぎとある。自分にあった竿の長さはどのくらいがいいか?という小学生からの質問もあった。

やはりな!と思ったのは毛バリについてである。

自分は黒い毛バリを使っていたが反応がないので、黄色の毛バリに換えたら出るようになった。だから黄色い毛バリはいいが、黒い毛バリはダメだと思う。どう思うかというものだ。

日本でも必ずある質問である。これは無限循環である。もし、質問者が釣れるはずの黄色い毛バリを使っていたとしよう。当然、反応のない日もある。そのとき赤い毛バリを使ったら出るようになったとすれば、黄色い毛バリはダメで赤だということになる。

ある日、赤はダメだったけど黒い毛バリに換えたらよかった。やっぱり黒がいい。これは際限なく循環して答えがない。

魚が反応するかしないかはさまざまな要因があり、それらの要因を考慮せずに毛バリの色が違うので反応が違うと思ってしまうからだ。

私は次のように回答した。日本に多くのテンカラ仲間がいるが、みなそれぞれ思い思いの色で毛バリを作っている。しかし、同じように釣っている。仲間うちで特別に釣れるという色は見い出されていない。ということは、毛バリの色は何でもいいという結論になる。これがシンプルに考えるということである。

ダニエルが補足する。自分もフライフィッシングをしていたので、テンカラで毛バリの色や形にこだわらないのが最初は信じられなかった。しばらくして形はこだわらなくていいだろうと理解できたが、色については、どのような色でも同じとわかるまでに1年かかった。

毛バリにこだわらなくなってから釣れるようになった。毛バリにこだわらないでトライしたらどうかというアドバイスだった。

ダニエルでも1年かかるのだから、フライ歴が長い人ほど毛バリの呪縛から抜け出るには時間がかかるだろう。納得してくれたかどうか。

その他、いくつかプレゼンがあって、次に会場を替えて毛バリ巻きの実演である。今回、3つテーブルが用意されていてそれぞれがオリジナルな毛バリを巻く。その一人がユタで知り合いになったジェイソンだ。彼の名前だけは映画「ジェイソン」からすぐに覚えた。コロラドでプロガイドをしているようだ。

やはりいいかげん毛バリには興味があるとみえて50秒で巻いてみせると驚く。ポンポン巻いて全部プレゼント。足らなければ毛バリボックスを開けて、みんな持ってって! 毛バリはテンカラの「こませ」である。

いろいろなブースが出ていた。おや? これはなんだ。「アボリジニの笛?」 なんで笛が?と思っていたら、イッシー!と呼び止められた。これをお前にプレゼントしよう。

「なにこれ?」 なんとテンカラ竿のケースだった。竹の節をくりぬく道具を開発し、レーザーで絵を描くのだそうである。隙間なく描いてあるのでこれ1本仕上げるのにずいぶん時間がかかるだろう。

さらにレーザーで彫った仕掛け巻きももらった。このブースには結構、人が集まっていた。竹が珍しいから買う人もいるだろうが、日本では売れないだろうと思う。

テンカラはシンプルという考えからいろいろなものが考案されている。女性コーディネーターが着けていたバックである。竿が1本ホールドできるようになっている。手縫いだそうである。気に入ったので買った。80ドルとのことだが、40ドルにおまけしてくれた。

ランチはホテルの庭である。日陰がないと暑い。テーブルを囲んでテンカラ談義である。1時間たっぷり時間をとる。

ランチの後はホテルの横、徒歩30秒を流れるボルダークリークでデモンストレーションである。持ち時間は30分とのこと。作努衣と竹皮の草履である。冗談でパジャマ?と言われた。自分はこれでは寝ないよ。

キャスティングのコツ、流し方、さまざまなテクニックといっても止め釣りとか、逆引きなどである。なんとデモの最中に20cmぐらいのブラウンが釣れたのである。これほどの説得力はない。やらしてほしいという人が列をつくる。そのつど手をとってアドバイスするが、男だけだったのは残念。

さんさんごご4時に解散で、あとは各自、ボルダークリークで自由にフィッシングである。エイコさんの夫のケンと一緒にテンカラをする。ケンはボルダーの公園環境の設計などをしているそうで、ボルダークリークは自分の管理下にあるらしい。

散歩する人、ランナー、自転車がクリークの横を通り、その横で短パンと運動靴でテンカラができる環境である。アウトドアスポーツというけれど、釣りとアウトドアが隣合わせでであることを翌日、実感することになる。

ディナーはホテルでジャズ演奏を聴きながらである。これまで意識して肉を食べてなかったのでステーキを注文する。これも単調な味。パンかご飯がほしいがこれだけのようだ。

マジシャンが特別にクローズアップ・カードマジックを見せてくれる。テンカラマンでアマチュアのようだが、テレビで見るプロのようにうまい。浜松のサミットでも紀州から来た若手がカードマジックを披露した。これだけ集まるとマジックの特技を持った人が一人や二人いるのかもしれない。

夜9時、サミットはクローズになる。明日は希望者を集めてボルダーキャニオンで講習である。時差ボケも次第に感じなくなってきた。今晩はぐっすり眠れそうだ。