高原川の武蔵野テンカラ会

 

武蔵野テンカラ会(ムサテン)との2日間は居心地がよかった。当初、ムサテンという名前からムサクルシイテンカラ会を想像したが、どうして、どうして関東のテンカラ会だけあって皆さんスマートで和気あいあいの会であった。

関西方面から「関東→スマート」が気に入らないという声が聞こえたような気がするが、関東と関西で釣りに対する気風が違う。一口に言って関東はスマートであっさり、関西は ねっとりとナンボである。言葉から受けるイメージかもしれない。

それはさておき、今回は岐阜県高原川のC&Rで遊ぼうという計画である。お昼に民宿「多代次」で待ち合わせて初対面の挨拶。ムサテンは、芸名ではなかった、源氏名でもなく・・幸渓、渓魚、渓 忠など渓にかかわる名前をつけている。さすがに峰渓という名前はないようだ。

釣りの前に私からフジノラインの「ソフトテンカラ4M」をプレゼント。フジノラインから私がいただいたものである。視認性がいい点と、高原川にはぴったりの長さで 、すぐに役立つだろう。

これにくわえて撃沈毛バリも。自分で使う毛バリはわずかで、巻くのはほとんどがコマセ用である。このコマセにはテンカラウィルスがついているので、感染間違いなしである。さらに名古屋の熱田神宮で大漁祈願の御祈祷を受けた毛バリでなので、釣れること間違いない。ホンマでっか。

午前中に1時間程度、様子見で竿を出した。雪代が流れていて平水より10cm高い。しかし、まずまずの活性で尺上のニジマス2本と泣き尺ヤマメなど数本であった。ヤマメが大きく成長している。

これはいいぞと思ったが、午後になって更に雪代が入ってしまい水かさも増え、水温は急に下がってしまった。手を入れればその冷たさに10秒と入れておくことはできなくなった。そんなこんなで釣果の方はパッとしなかったが、さすがにキャリアの人は釣っている。

ムサテンは居心地のいい会である。なぜだろうかと考えた。名人や師匠を中心とした会ではなく、とりたてて腕のある人がいるわけでもないので、技術的にウルサイこと を言うわけでもなく、自由に好きなようにやればいいという考えが会をつらぬいているからだろう。

いつも思うのだが多代次も居心地がいい。食事がいい、お風呂が源泉掛け流し(かってタレ流しと言ったタレントがいた)、フトンが適度に厚く熟睡できる、民宿なのにフトンを敷いてくれる、オバサンが元気で、気持ちがいい。毎年かよって30年である。

ムサテンには3名の女子部員がいるが、うち渓夏さんは先の釣行で膝を痛めたそうで欠席とのこと。渓夏さんの経過は順調とのことで、今回は2日間、渓魚さんと遊魚さんにつきっきりで面倒を見る。 オジサン元気が出る。

二人ともテンカラが好きなことがよくわかる。もっと上手くなりたいという気持ちが読みとれるのだ。どうでもいいと思っていると態度や言葉の端々に出るが、男性陣がとっくに温泉に入っていても粘る。この粘りはやがていい結果につながるだろう。

その夜はシャブシャブである。最近はシャブがなにかと話題であるが、こちらは飛騨肉である。バカ飲みする人もなく、声が大きくなる人もないとこがスマートと思う所以である。アルコールがまったくダメなものにとって、痛飲して声の大きくなる人とおつきあいすることほど面倒なことはない。

明けての朝は小雨である。渓魚さんと遊魚さんは朝5時から早朝特訓の自主錬である。私は7時まで完熟トマトである。夜中の雨で更に水かさが増し、苦戦したが、2人とも前日よりキャスティングがうまくなり、狙いどころも的確になった。条件がいい日ならばバカバカ釣るようになるだろう。

武蔵野と言えば、学生時代のたわいもないギャグに激しく反応した自分を想い出す。中央線に武蔵小金井という駅がある。学生のとき、先輩がその駅を通る際 に「宮本武蔵に子どもはいたか」と聞いた。私は真面目に考えた。宮本武蔵? お通?の間に、結婚したのか・・・「わかりません」。

「武蔵には子どもはいなかった」。武蔵小金井(こがねえ)

うーん、なんと面白い。私はこういうのに夕まづめのイワナのように激しく反応するタチである。

ギャグというよりヒネリを面白いと思ったのは高校1年のときである。青少年自然の家の所長が、口の字ひとつで名字と名前の人がいる が、なんと呼ぶかと生徒たちに問いかけた。

口ひとつで名字と名前? ウンウンまじめに考えた。本当にいると思ったからだ。まだガキだったので素直だった。

たなかじゅうない

たまなしくに

激しく面白い!と思った。高校生だったので「たまなしくに」により激しく感動した。反応は同級生よりも敏感だったと思う。以来、ギャグ好き(といってもダジャレ、オヤジギャク)になったのは、これを面白いと思ったことにあることは間違いない。はるか昔のことを鮮明に憶えているのだから。

武蔵野テンカラ会は地元での釣行の後は、決まって焼肉で仕上げるようだ。秩父の焼肉は安くてうまいらしい。ノンアルコールビールで流しこむように腹一杯、ゲフゲフになるまで食べてみたいものだ。いつか、その日が来ることを願っている。