今年もシーズンイン!

 

131日、今年最初の花粉アタックだ。今年は早い。眼がシカシカと痛い。鼻がツンツンする。まだ初期なので症状は軽い。自慢ではないが、私は花粉症歴35年のキャリアをほこる。まだ花粉症という言葉もなかった私の初体験は悲惨なものだった。

 

4月のある日、地元愛知県の奥三河でテンカラを終えて車に乗り込んだ途端である。激しい目の痒み、続けざまのくしゃみと、止めどない鼻水が突然襲った。目が痒くて、痒くて、かきむしる。止めようと思ってもかかずにはいられないかって経験したことにない痒み。そのうち、目が開かなくなってしまった。右目、左目、交互に開けながらの車の運転。その合間の絶え間ないくしゃみと鼻水ダーダーの猛襲。やがて鼻が完全に詰っただけでなく、目がゴロゴロして激しく痛むようになった。

 

何とか家にたどりついて鏡に写るわが顔をみて驚いた。両目がふさがってノックアウト負けしたボクサー、はたまた両目お岩さん状態である。そんな状態で数日ガマン。微熱も続き、目尻が炎症でただれてきた。

 

辛抱たまらず病院に駆け込んだが、当時は花粉症という言葉もなく、アレルギー性結膜炎と鼻炎ということで、症状を抑える薬を処方された。これは劇的にきいた。目のかゆみも鼻水もピタッと止まったが強い副作用があった。全身の脱力感と眠気である。身体から力が抜け、仕事どころではない。眠らないようにひたすら耐えなければならない会議がつらい。薬を止めれば鼻水ダーダー。テッシュでかんでもキリがないので、下に雑巾を敷いてポタポタと落ちるにまかせる。

 

当時、原因が花粉ということがわからなかった。その後も好きなテンカラで毎週のようにスギ林を分け入っていたので症状が治まるときがなかったが、梅雨の季節を迎えて症状はウソのようピタッと治った。

 

それ以来の35年、決まって2月中ごろになると症状が出て5月末まで私の花粉症との闘いは続くのである。世間の人は春を満喫するのに花粉症のことが頭から離れない憂鬱。私の春を返せ。

 

35年もキャリアを積めば花粉症とうまく付き合う方法もわかってきた。現在、日本ではスギ花粉症の人が人口の1/5ぐらいという。釣りはしたいが花粉が怖いという人も多い。スギ林を分け入る渓流釣り・テンカラで鍛えてきた私の花粉症対策がお役に立てば幸いである。

 

花粉症の四大症状

花粉症はアトピー性皮膚炎やぜんそくなどと同様のアレルギー疾患といわれる。アレルギーは身体に侵入した異物を撃退する防御反応が過剰である場合である。アレルギーを引き起こす原因物質がアレルゲン(抗源)であり、花粉症の場合はスギやヒノキの花粉である。花粉自体ではなく、花粉に含まれているたんぱく質である。花粉症の原因になる花粉は50種類以上あるようだが、スギ花粉の人が多いのは、スギは森林の18%、国土の12%を占めているからである。

 

花粉が鼻や目の粘膜につくと花粉から抗原が溶け出す。この抗原に対抗するために、身体は抗体を作り出し、抗体は肥満細胞に乗って抗原をつかまえる。このとき肥満細胞からヒスタミンなどの神経刺激物質が放出される。

 

ヒスタミンは神経や血管に作用し、くしゃみや鼻水が出たり、鼻がつまったり、目が痒くなるという症状を引き起こす。もっともこれらの症状は身体を侵入者から護る防御反応と考えることができる。

 

  くしゃみ:風の勢いで吹き飛ばそうとする

  鼻水:水の勢いで押しだとそうとする

  鼻づまり:鼻の中の血管を広げ鼻の穴を狭くして、侵入者をさえぎる

  目の痒みや涙:目の血管を広げ、白血球を出して抗原と戦う 

 

 つまり、本来なら花粉などゴミであり、身体は過剰な防御反応など必要ないのだが、アレルギー体質の人はわずか100分の3ミリというミクロの花粉にも過剰に反応してしまい、その結果、特有の症状に悩まされるというわけである。

 

 花粉症は10代〜40代の若い人に多く、高齢になるに従い割合は少なくなるようだ。これは歳とともに抗体が少なくなることにより、症状をおこすヒスタミンの影響が軽くなるためと考えられている。

 

天候と飛散量

花粉症の人は花粉を避けるのが最大の予防だが、釣りとなるとそうもいかない。釣りに行く前には花粉情報をチェックして、飛散の多い日や時間帯は警戒するにこしたことはない。地元、奥三河のスギ林は山が枯れたのではないか思えるほど茶色になっている。あれが暖かくなると一斉に撒き散らすと思うとゾッとする。暖かで風の強い日には、山火事のように薄黄色い煙が舞い上がる。あぁ怖い。

 

スギ花粉は2ヶ月にわたって飛びつづけ、スギがピークを過ぎたころから今度はヒノキの花粉が飛び始める。ヒノキは約1ヶ月続く。スギ花粉症の65%がヒノキにもアレルギー反応を起こすといわれるので、都合3ヶ月は花粉で悩まされることになる。私が5月末までクシャクシャするのは両方にアレルギーがあるからである。

 

スギの飛散が非常に多い日は、天気が晴れまたは曇り、最高気温が高い、湿度が低い、やや強い南風が吹き、その後、北風に変わったとき、前日が雨などの条件のときである。また花粉の多い時間帯は昼前後と日没後である。これは気温が上がって花粉が飛び出す時間帯と、上空に上がった花粉が日没後に地上に落ちてくるからと考えられている。

 

 それにしても急に花粉症の人が増えたように思う。この理由としてはいくつかの説があるが確定的な原因は不明のようである。

 

1970年代までの増林時代に植えられたスギが樹齢40年以上になり、大量の花粉をまき散らすようになったから。

  大気汚染も関係しているらしい。デーゼルの排気ガスには抗体を活発に作る成分があり、スギ花粉に対して過敏になるという。事実、花粉症患者は農村部より都市部の方が多い。

  この他、たんぱく質の多い食事、ストレスが自律神経のバランスを崩し、アレルギーを起こしやすくしている、などである。

 

私の花粉症対策

 長い経験から花粉症とうまくつきあい、症状を和らげる方法がわかってきた。私は次のような対策をとっている。

 

1.    2月のはじめに、かかりつけの耳鼻咽喉科にいく。

 

 花粉が飛び始める前に予防的に薬をもらって飲んでいる。これをするようになって重い症状が出なくなった。薬が効き始めるには2週間くらいかかるらしい。また、飲んだり飲まなかったりはよくない。つまり身体の中に一定濃度の薬を入れておくことが大事のようだ。予防に勝る治療はない。症状が出てから対症療法的に薬を飲んでも手遅れのことが多い。2年前にレーザーで鼻粘膜を焼いたが、もう効果は切れているかもしれない。

 

2.    釣りのときにはマスク、帽子をかぶる。

 

 私はメガネをかけている。メガネをかけるだけで目に入る花粉の数は半分以下になるという。スギ林の近くにいるとメガネの裏側がうっすら薄黄色くなっていることがある。メガネがかなり防いでいるのだ。ひどいときにはその上からメガネをすっぽり覆う偏光グラスをしている。これで目をほとんどカバーできる。

 花粉症用マスクは必需品である。マスクで花粉は1/5まで少なくなる。ぬらしたガーゼやウエットティシュを中に入れておくとさらに効果的ということで、試してみたが呼吸が苦しい。同じ目的で要注意日には鼻の穴にティシュを詰めている。マスクで隠れているのでわからないがマヌケな姿だと思う。いずれも緊急避難用で通常はしていない。帽子は必ずかぶっている。花粉は髪の毛につきやすいようなので、帽子で花粉をボウシできる。

 

3.    症状が出たら薬を飲んでいる

 

 注意していても症状が出る。年によって重かったり、軽かったりするのは花粉の飛散量によるようだ。症状が出た場合には対症療法的に薬と目薬をさし、軽減している。数日、釣りに行かないと次第に症状は治まってくる。

 

4.    ガムや飴が一時的に症状を和らげる

 鼻が詰ってしまったときには鼻の下にメンタムを塗るとスッと鼻が通ることがある。また目がクシャクシャするときも効果があるがいずれも一時的である。ペパーミントのガムや飴も結構きくが、ガムは噛み始めだけなので、飴の方がきくような気がする。

 

完璧に防ぐ方法

 スギのない北海道と沖縄にはスギ花粉症の人はほとんどいないという。花粉症の人は花粉との接触を絶てば症状は出ないので、どうしてもとなれば北海道や沖縄、海外に引っ越す以外にない。

 

フトンを乾すのもバカにできない。しっかり花粉をはたいて取り込む必要がある。それでもフトンを乾した翌朝はクシャミの10連発である。これをモーニングアタックというらしい。朝起きたとき、夜のうちに床に沈んでいた花粉が舞い上がったのを吸うためである。

 

 私がメガネをかけているので試したことはないが花粉症専用のメガネも効果的らしい。ただし、裸眼やコンタクトの人向けである。水泳のゴーグルなら完全に遮断できるであろう。度付き水泳ゴーグルがあるのでためしてみようかと思っている。

 

さらに防塵マスクや、顔全体を覆う防毒マスクなら目や鼻も完璧に護られるだろう。防毒マスクをつけてズー、ズー音を立てながら街を歩く花粉症患者の出現はちょっと怖い近未来的な姿である。