箱根を越えるとそこは大雨だった

 

山形県米沢市の我妻(わがつま)さんのところで遊んで来た。2年越しの計画である。我妻さんはシマノの餌釣りのインストラクターで、米沢市の市議会議員である。名古屋は梅雨も明け連日37度越えの猛暑の中、前日の電話では山形は小雨だけれどいい条件とのこと。これはいい釣りができそうと、ウキウキして新幹線に乗ったその朝7時から、山形は大雨洪水警報の出るドシャぶりになったらしい。

「やぁやぁ、よろしく」の挨拶の後、我妻さんの開口一番、「どこも濁流で釣り場がないんです」ガーン、まさかりかついだ金太郎である。まさかそんなことになっているとは予想もしなかっただけに、正直、かなり落ち込んで、気温26度の米沢で熱中症のようにクラクラした。

私は嵐を呼ぶ男と言われている。「♪オイラが怒れば嵐を呼ぶぜ・・」怒ってないのに嵐を呼ぶらしい。箱根を越えると間違いなく嵐になるという本領を発揮して、新幹線が箱根を越える 頃、米沢はドシャブリだったらしい。

とりあえず昼メシにしようと浦カメラマン(浦カメ)とラーメン屋に。米沢のラーメンはうまい。平打ちの中太の縮れ緬はツユが緬に絡んで私の好みである。しかも量が多くて500円という値段が肉食系大食いの私にぴったりである。

ラーメンのことはいいので、どこで釣るか? うらやましいことに我妻さんの家から1時間の範囲に20本くらい渓流があり、そのすべてでヤマメ釣りができるらしい。なにせ自宅は川の横なのだ。それで、毎朝4時起きしてラジオ体操がわりにヤマメ釣りにいくらしい。

そのすべての川がカフェオレか、ジョージアの缶コーヒーである。どうする? ダム下なら、いつもは水が少ないだろうからと期待して行ったダム下も、放水で濁りはほとんどないものの20cm近い高水。餌釣りならいい条件だがテンカラではどうすることも。

3日間いたのだけれど、結局どこの川も水が引かずに、まったくテンカラの本領を発揮することなく、後ろ髪を引かれる思いで米沢を後にした。後ろ髪も、前髪もまだあります。なんのこっちゃ。平水ならいい釣りができたのは間違いないだけに、今回ほど私の大雨男をうらんだことはない。

増水のときは魚がみんな下を向いて、流れてくる餌を食っているので、場所によっては重いビーズヘッドをつけた毛バリを沈ませれば少しは釣れたかもしれないが、普通毛バリにこだわった。どこもかしこも平水の2倍の水量なので、テンカラは苦しかった。

ところで我妻さんの餌釣りをじっくり見せてもらった。ウーン、ミミズの餌釣りは最強である。振りこむたびになにかしらアタリがある。今、当たった、触った、掛かった・・この連続である。

で、なにを思ったか。餌釣り師をテンカラに転向させるのは難しいということだ。こんなに頻繁にアタリがある釣りを経験していれば、ウンスンのテンカラを面白いとは思ってもらえないだろう。

まったくテンカラはMの釣りである。増水ではダメ、高水でもダメ、ましてや濁りはダメ。平水か渇水がベストだけれど水温が高くてもダメという亀甲シバリが多いだけに(亀甲は余分)、爆発的に釣れるときの喜びが大きいのでMなのである。

我妻さんのご自宅に泊めていただいた。まったく気づかいしないでいい奥さんの料理がおいしい。だから我妻家には大勢、人が集まるのだ。聞けば我妻さんより酒豪らしい。ビールが好きな人からはモドキと言われるキリンフリーを、おいしいと言ってくれる奥さんの気づかいがうれしかった。我妻の意味がわかった気がする。

田んぼアートは見ごろだった。3Dで立体的に見える。銃が浮いているのだ。何で米沢で八重の桜?と思ったが、会津と米沢は近く、会津城陥落の後、八重は一時期、米沢にいたという縁があるそうである。

では最後にラーメンをということで、冷やしラーメンを食べた。これも米沢のラーメンらしい。冷やし中華ではなく、冷たい汁に氷を入れたものである。正直、美味しくなかった。湯気がでていないとラーメンという気がしない。最後まで今回のテンカラを象徴するような味であった。シャビ、シャビ。

我妻さんの釣り(動画)