転ばぬ先のストック

 

Nさんから「ストックを持ってきてください。楽ですから」の連絡。

最近買ったストックは夜の老人徘徊の杖として使っている。ノルディックウォーキングがブームと聞いて即、買ったものである。確かに2割方、足が速くなり、疲れが少ない。姿勢がよくなり身体のバランスがいいので疲れも少なくなるようだ。

朝6時半にNさんと出発。今日は我々だけで独占だと思ったが、なんと後ろから餌師の5人組が追いかけてくる。おそらく目的の場所は同じに違いない。その距離は200m。河原が広く丸見えなので、距離が次第に縮まってくるのがわかる。先頭を切るマラソンランナーの心境だ。なにが何でも目的地まで先を越されないようにしなければ。

それさえなければゆっくり休憩をとりながらであったが、ともかく追われるように河原を、ときどき廃道の登山道を休みなしで歩きつづけて1時間20分。汗がしたたり落ちる。こんなことがあろうかとアミノバイタルはしっかり摂ってきた。

結局、目的地に先について餌師5人組と川割をしてホッと一息。さっそく釣り開始である。この日は水が高く、テンカラのポイントがつぶれていて、そんなこともあって最大で22cmのイワナであった。この時期になっても真っ黒である。この時期だから早くも日焼けして真っ黒なのかもしれない。サビではなく陽のささない暗い場所を棲みかにしていたからだろう。

本来はヤマトイワナの領域だが、ニッコウも放流されているとかでオレンジの斑点が多く、おそらくハイブリッドだろう。

釣りはそんな結果であったが、ストックをついて歩くのは実に楽である。いつもなら河原を歩けばヨロヨロ、疲れてしまってヘロヘロなのだが、ヨロ、ヘロですんだからだ。釣りをするときは短くしてザックに入れればいい。これからストックの出番が増えるだろう。

ただ、この日、深い渡渉はないということでスパッツだった。ふくらはぎが水温10度の水に濡れる。帰路、ふくらはぎが熱をもったように火照ってしまったのがわかる。私は少量のアルコールで真赤になる体質で、血管の感受性が非常にいい。このため冷たい水に入ると反作用で逆に血管が拡張し、火照ってしまう。

このような体質の人は結構いるだろう。ずっと以前、皮膚表面の温度を測るサーモグラフィーを使ってウエイダーはどのようなものがいいかを、水が入るタイプと、水が入らないタイプで実験したことがある(拙書 テンカラ解体新書)。被験者は私と、テンカラ界の左甚五郎の春日さんである。春日さんは水に浸かっても足が火照らないタイプである。

サーモグラフィーでみると、私の足は水に浸かると急速に温度が下がる。一方、同じ水温でも春日さんの低下は少ない。水からあがると今度は私の足は急速に温度が上がるが、春日さんの温度の上がりは少ない。つまり、私の体質は温度変化に非常に敏感で、その差が大きいことがわかる。

そんなわけで足の火照りがひどい。昔、鮎釣りをやっていた頃は、夜、足の置き場がないくらいに火照ってしまって、フトンの上で足をばたばたさせたこともある。私のようなことが起きる人には同感!と思ってもらえるのではないだろうか。

対処法は冷やさないことに尽きるようだ。だからスパッツではなく、夏は暑くてもウエイダーを履くしかない。でも、スパッツだけの快適さは捨てがたいので、これからの季節の悩みどころである。