イギリスでもテンカラが

 

一昨年、イギリスのステーブが日本にきて大町でテンカラをしました。そのステーブがイギリスのフライフィッシングクラブでもテンカラをするグループがあると情報をくれました。魚(ブラウン、グレーリング)が毛バリをくわえる動画があります。

Cressbrook and Litton clubのHP

 

 

「スティーブというイギリス人がテンカラをやりたいので面倒みてほしい」というメールが北の安曇野渓流会へあり、水谷事務局長から私に面倒みてくれないかという依頼が。誰でもWelcome。フライ発症の地のイギリスからテンカラをやりたいなら、なおさら面倒みましょうと実現したのが7月23日 (土)。


大町で待ち合わせ。足のサイズは30cmと聞いていたので、デカイだろうと予想していたが、やっぱりデカイ。私がデカッ!と思うくらいの185cmである。日本語ペラペーラ。聞けば奥さんが日本人で実家が大町の隣の池田町。日本とイギリス相互の投資会社の仕事をしているので、日本にも時々来るとのこと。どうりで。


すぐに意気投合。バカ高いイギリスのフライフィッシング料金などの話が面白い。日本の文化にも造詣が深く、日本文化を尊敬していることが言葉の端はしでわかる。知的で、物静か。私のようなオヤジギャグは言わないがユーモアのある人である。


なんでテンカラなの? どうやらイギリスの雑誌にテンカラが紹介されたらしい。日本人がイギリスで釣りをしたときことが記事になり、その記事を書いた編集長が実際に自分もやってみたら、面白く、よく釣れ、しかもシンプル…。これを読んだスティーブが、ならば日本に行ったらぜひテンカラをやりたいとWebを検索していたら北の安曇野渓流会のサイトに行きついたらしい。


さっそく大町山岳博物館に案内し、明治11年、当時のイギリス公使のパークス一行が立山登山をしたときに、彼らを案内したのではないかと思われる遠山品右衛門の毛バリ釣りの道具、竿などの展示を見てもらった。立山登山日記を書いた書記官のアーネスト・サトーのことはスティーブも知っているようだった。


では、実釣というわけで籠川へ。竿は3.6m、ラインは4号を4m、ハリスは0.8号1mの標準的な仕掛けにする。苦労するのではと思っていたキャスティングもすぐに75点レベルでクリア。クレバー(頭がいい)だ。私の「レッスン!」という言葉が気にいったらしい。どんどんレッスンしてくれという。

その都度、彼の釣りを中断して、そこはここに毛バリを落とし、このように流す、なぜならと理屈を交えて教える、この日の籠川はやや水が高く、流れも強く、ポイントが限定されているため苦戦する。結局、籠川では22cmのイワナが1匹。


ではと、高瀬川の葛温泉前に移動。この頃になるとキャスティングもポイントの見極めも的確で、今日がテンカラ初日、それもまだ3時間とはとても思えない。陽が傾き、さしもの真夏の明るさも水面に黒い影を作りだす5時をまわって、アタリも活発になるとともに合わせが利かないことに戸惑う。さまざまなアタリをつかめないのは当然だ。ライズしていた1匹のイワナを完璧な合わせでヒットさせた。本当にうれしそうだった。


結局、この1匹に終わったが、日本でテンカラ竿、毛バリ、ラインなど一式揃え、イギリスでテンカラをやるという。彼ならフライ発祥の地、イギリスでテンカラを普及させるかもしれない。イギリスでテンカラを振るのも悪くないなと私は密かに思っている。ここに書いてしまったら密かではないけれど。