年金オヤジたちの奥飛騨慕情

 

サンデー毎日、ときどき旗日(はたび)の牧野さんと奥飛騨の高原川に行ってきました。旗日と書きましたが、わかる人は少なくなりました。昔といっても1964年の東京オリンピックの前ぐらいまで、休日はどこの家でも国旗を出していたのです。今日は旗日か、なんて言ってました。どこの家にも国旗と金の玉、白黒の棒と国旗立ての金具があって、旗を出すのは我が家では子供の仕事でした。出さなくなったのはオリンピック以降、ビルが乱立して三丁目の夕日を見ることができなくなったからではと思います。皆、忙しくなって国旗どこではなくなったからでしょう。

この前、ある家に国旗が出ていて、なんで?と思いましたが、そうか今日は建国記念日だ、とわかるまでしばしの時間が必要でした。若い人にはなぜ国旗を出すのかわからないでしょうね。

そんなことどうでもいい! 釣りはどうだったんだ?

正直言って、言いたくないけれど釣れました。2日間ともC&R区間に入りました。例年のことですが、この時期、地熱と温泉水で水温が高く、朝9時ごろは10.5度程度でお日さんが照ると13度ぐらいまで上がり、その頃になるとバシュ、バシュッとライズが始まります。よくみるとライズするのは18〜22cm程度の小さいヤマメで、毛バリをしっかり見切ります。遊んでくれないので、今日のところは堪忍してやって大物狙いです。

でかいのは水面まで出ないので、なら毛バリを沈めてやろうと沈む毛バリを。金ビーズがついているので掛かった魚には金歯がキラリ! ラインとハリスの結び目が水面に触れるか、沈むようにしてラインが垂直になるようにジジッ、ジジッと流します。レーンに入ると心が集中ゾーンに入ります。「来るど!」かすかにラインがフケる。

「よし来た!」

思わず「よしッ」と声が出ます。ガツッという手ごたえの後に、ギューンと竿が絞られ、糸鳴りがする。これはでかいド! しばらく遊んだのちにランディングしたのが36cmのイワナ。なにが面白いかと言えば、ここで出ると睨んだ(本当に睨んでいません、狙った・・わかってるって)、ポイントから思いどうりに流して、期待した魚が釣れたという偶然性のカケラもないところが本当に面白い。

この時期ではいい魚です。腹がポンポコに膨らんでいて、餌をたっぷり食っているのがわかります。ここは温泉水で水温が高く、よって水質も悪いので、気の弱い人なら手が出せない大きな黒川虫が一杯います。C&R区間なので先行者がいるのは当たり前。今回は2人のフライマンの100m後を牧野さんと釣り上がっていきましたが、出ます。

16日にも行ったのですが、その日は土曜日とあって最も多いときで私の前後に一目、15名のフライマンがいました。上流に8名、下流に7名です。これが一定のペースで上流に移動していくのです。

フライマンができない場所はどこか。誰でも出せる場所では出ません。この時期、沈ませなければ出ないので、沈む毛バリを使うなどの工夫が必要と思います。そんなこんなで2日間で尺ヤマメ、35cmのニジマス、尺イワナなどで尺上が5本出ました。自慢みたいですみません。自慢です。ということは一年の予定数の尺ものを全部釣ってしまったのでこの後が心配です。

奥飛騨はやはり寒い。車の中に置いたウェイダーやシューズが朝、バリバリに凍ってました。ヒートテックの下着に、厚いシャツ、厚いフリースにウインドブレーカー、そしてベスト。手袋までしても風が吹けばジンジンと冷えます。釣れてくる魚は暖かです。水温13度の温泉だから。

ならばと、我ら年金テンカラマン2人もいつもの宿「多代次」で凍った身体を温泉でユルユルと温めたのでした。ここの旅館、民宿はどこも源泉かけ流しで24時間いつでも入れます。お肌つるつる、一日渓流を歩いて足もつるつる、でもお互い頭はつるつるでなくてよかったねと言いつつ、奥飛騨の夜は 更けていったのでした。ところで奥飛騨はわかるけど、どこが慕情なの?