ダニエルのビジネスモデル

 

Tenkara USAのダニエルが、今年も来日し、瀬畑さんと釣りをしたいというのでアレンジした。ダニエルとの連絡も今やSkypeである。顔を見ながら直接、話ができるのでメールを出す機会がほとんどなくなった。

野呂川での瀬畑さんたちとの釣りの後、私が引き受けて開田高原へGO。名古屋が37℃のとき、開田高原は日中でも23℃で快適である。

MTおんたけの鈴木さんの案内で源流へ。降り口と経路は鈴木さんの案内なしにはわからないのでつきあっていただいて感謝である。

すばらしい渓相である。御岳山は火山なので渓流の石は黒っぽい溶岩で、これらの石が苔むしていて、木々の緑とあいまってまさに深山幽谷である。石が苔むしていることは大きな水が出ても石が動かない安定した渓流であることを物語っている。

残念ながら、昨年、この渓流が雑誌に紹介されてしまい、餌釣り師がおしかけたことで抜かれてしまったとの話も聞いた。そのためか、以前なら決まって魚を見るポイントには魚はおらず、魚が少なくなってしまったかもと、鈴木さんの顔は今日の天気のように曇り気味である。

ダニエルは釣り半分、写真や動画を撮ること半分である。たくさん釣ってほしいのだが、渓流の素晴らしさに感動して、釣りよりも写真や動画に費やしている。彼の撮る写真は美しい。一眼レフ、GoPro 、防水スマホと様々なツールを駆使してプロのような写真を撮る。そしてWebやFacebookへのアップが速い。疲れて帰ってもその日のうちに即アップである。

Facebookと言えば、面白い川柳があった。

「図書館でFacebookを探す父」

思わず笑ってしまったが、私もこの父のようにならないために、ガラケーをスマホに替えてLINEデビューした。

「ダニエル、せっかく来たのだからもっと釣りをしたら?」

釣りに専念すればいいと思うのだが、彼がWebにアップするのには理由があるようだ。ダニエルは4年前に世界で初めてテンカラをビジネスにした創始者である。

日本ではテンカラだけでビジネスにはならないが、テンカラがビジネスになることを直感し、通販で世界にテンカラの販路を広げるビジネスモデルを初めて創ったのである。ビジネスとしても成功しているようで、コロラドに家を買い、スバル・ホレスター2013モデルも買ったようである。

テンカラがビジネスになることがわかれば次々にライバルが出てくる。たとえばThe Tenkara Timesである。これはチェコの会社のようである。なんと! 驚くことにシマノの渓流Tenkaraのコピーが売られているのだ。長さは違うもののグリップと尻栓までEVAにして、コルク部分を前に持っていく形状はそっくりである。値段は89ユーロなので、12000円程度である。

おそらく中国でのコピーだろう。中国からはシマノの竿、ダイワの竿、いろいろな竿のコピーができますと盛んに売り込みがあるらしい。さすがはコピー大国である。12000円はユーロ圏の人の収入(GDP)からすれば日本なら2万円程度の竿になるのではないだろうか。さらに毛バリは、Ishigaki kebari、Amano kebari、Sakakibara kebariも売られている。つまり、ダニエルのビジネスモデルをそのままコピーしているのである。

ダニエルはThe Tenkara Timesに対して抗議したそうであるが、向こうも弁護士を立ててやる気だそうで、ダニエルも仕方ないと思っているようである。「真似されるのは一流」と日本では言うのだとダニエルを慰めるのだが、ビジネスとなると、そう呑気なことは言ってられないのだろう。

そこで日本の後にはイタリアでテンカラの講習会をするらしい。ヨーロッパの市場は売上の15~20%の規模らしい。Facebookの威力はすごく10名程度の参加と予想していたら、なんと60名が集まるようだ。その後はイギリスに渡るようである。

ダニエルの強みはテンカラができることである。実際に上手いし、理論的である。自分はただ単にテンカラ用品を売るだけではないという自負がある。毎年、テンカラのルーツである日本に来て、さまざまな人と交流し最新情報を入手しているのは自分だけであると。

ライバルに差をつけ、常にトップランナーであり続けるのは創始者の宿命なのかもしれない。この4年間のつきあいで趣味で遊んでいる私とはテンカラへの意識が変わってきたことを感じるようになった。

ちなみにダニエルは漢字で「打仁得流」である。テンカラをやるのだから漢字の名前必要だろうと私がつけた。

「流れに毛バリを打てば仁を得る」

と言う意味(のつもり)である。本人は漢字は気に入っているようだが、意味はまったくわかっていない(笑) 

私だって毛バリを打てば仁(人としての優しさ)が得られるかわからない。でもテンカラをしている人は優しい人が多いように思う。少なくともバーブレスでリリースする人は魚に優しい。

天気予報のとおり、昼過ぎてから雷雨になった。頭の上でゴロゴロ。レインギアの袖から雨が入る。湿気でメガネが曇り、前がかすむ。雨の日になにがいやかと言えばメガネが曇り、水滴で視界がグチャグチャになることである。前がよく見えない。それでなくても足元不如意なのに、ヨロヨロする。ヨロヨロはメガネのせいばかりではない。歳だから仕方ないか。ケガなく無事帰れたことでよしとしよう。

翌日はイタリア人のウビも合流しての歓迎会だが、長くなったので次に。

写真は鈴木さんから。