2012テンカラサミット in ユタ 

(5)食い改める

今回もアメリカ人が普通に食べているものを食べることにした。というよりソルトレイクでは日本食や中華などの選択肢はほとんどないようだ。定住すればいろいろあるのだろうが、すべておまかせの旅行では無理だ。

ソルトレイクに着いて、ジョーンが最初に案内してくれたランチはスベアリブを焦げたように焼いたもの。この土地の典型的な肉の食べ方らしい。確かに最初のうちはうまいがどこを食べても同じ味にたちまち食傷気味である。中盛りを頼んだが思った以上に量が多い。野菜がない。インゲン豆を茹でたのとポテトサラダ。以上。完食。ゲフッ。

ランチの時間を外れていたので店には我々だけである。典型的な西部の店といった印象である。その夜のディナーはピザの店。日本ではありえない巨大なピザ。それのみ。それをコーラで流し込む。

翌日のディナーは前夜祭ということで20人ぐらいが集まる。 ユタ州はモルモン教徒が多い。アルコールには厳しい。飲酒は21歳以上らしい。レストラン(巨大な飲み屋)に入るとき年齢認証でパスポートを見せろという。今は持ってないというとOK。我々、日本人はどこからみてもオッサンだろう。

ジョーンやエリックは奥さん連れ、Robはフィアンセと一緒である。ちょうどロンドンオリンピックの開会式がモニターから流れているがほとんど関心がないようだ。

ウェイトレスが注文を取りに来る。胸の開き具合が微妙だ。通訳の中野さんの視線が胸元に注がれている。もちろん私もチラ見なことは言うまでもないが、中野さんよりそそぐ時間が短い。ここで私の方が短いと自慢しても・・・。ウェイトレスのチップは18%だとか。胸もチップに含まれているのだろうか。

見ていると全員がビール。そしてお決まりの乾杯。日本人が来てくれたというわけでまずCheers!  そしてKanpaiと2回コール。見ているとビールはジョッキに盛り切りである。2杯、3杯と注文する人はいない。向こうの人は遺伝的にアセトアルデヒド脱水素酵素があるのでアルコールには強いが、何杯も飲んで酔っ払うのは見苦しいとされているようだ。そのかわり飲んでも平気で車を運転する。飲酒運転の基準は日本より甘いらしい。

あれこれ食べる。ともかく一つの皿に盛り切りでしかも量が多い。私などなんでもペロリ食べてしまうが播磨テンカラ会の3人には量が多いようだ。そして野菜不足。野菜を注文しようと思えばあるのだろうが、ポテトサラダとレタス、ニンジン、そしてトマトが典型的なものだろうか。

ある日のランチにファストフードの店に入ったが巨大なバーガーと大盛りポテト、そしてチキン。野菜が食べたい。見渡せばファストフォードの客の約半数が肥満である。どこからみても健康とは言えない身体をしている。

いつも思うのだがアメリカ人は食べ過ぎだ。何でもデカ過ぎる。人、ひとりが生きるためにまた健康的な生活を送るための量を明らかに、そしてはるかに超えている。

ユタ大学の1Fの朝食会場の廊下に昔の大学キャンパス内のセピア色になった写真が貼ってあるが、写真の人達は皆スリムである。それらの写真に囲まれて肥満の人達が食べる。

食は文化である。その国の気候、風土に適したように長い歴史が造ったものである。その国に行ったら(住むなら)その国の食べ物を食べるのがいい。アメリカの肥満について無数の本がでているが「アメリカ人はなぜ肥えるのか」(日本経済新聞社)は分かりやすい。

アメリカの敵はアルカイダではなく肥満であると言われる。アメリカは、今後も肥満と戦わなければならない。図を見るとアメリカ人の肥満(BMI30以上)が1975年、今から40年くらい前から劇的に増えたことがわかる。この本ではその複合する理由をわかりやすく説明しているが最大の要因は強欲資本主義のシステム化である。

利益は出資した株主のために。利益が出なければ経営者は簡単にクビを切られる。経営者は利益を上げるために、大量生産でコストダウンをはかり、子供に甘いもの、味の濃いものを食べさせる。砂糖がいっぱいの大きなコーラやジュース 、アイスクリームが学校の中で簡単に買え、学校は飲料業者からリベートを得る構造。

三つ子の魂百まで。子供の頃の味と量を生涯求めることになる。それが今から40年前から始まったというわけである。この本によれは日本の肥満率は3.4%で先進国中もっとも低い 、韓国が3.8%である。しかし、メガ盛り、などが出てきたので安心はできない。他山の石としなければ。

今回、私にはアメリカの食事が合っていないことがわかった。1週間食べ続けたら、さすがに腹の具合が悪い。腹がこころなし出てきた感じがする。和食を食べたい。明日で帰国という夜、サンフランシスコの日本人街の和食の店「赤とんぼ」で刺身を食べる。

ここは茨城で板前をしていた人が27年前に開業した店で、正統の日本食を出す店だ。オヤジは団塊の世代。「同じ団塊ですね」というと、「はい男根の世代です」という典型的な日本のオヤジだ。

刺身、鮎の塩焼き、ご飯に味噌汁。そして新メニューのテンカラロール。テンカラロールはサーモン、イクラをあしらった押し寿司。うまい、やっぱり日本人だ。味が深い。刺身にしても一切れごとに味が全く違う。かすかに甘く、そしてやさしい。日本人でよかったと思うときだ。

この際、食い改めよう。帰国して以来、家内に徹底して和食にしてもらった。いくつかの小鉢に小盛にして、それしか食べないようにする。どんどん体重が減る。身体の調子がよく、頭がすっきりしている。帰国して体重が2キロ減った。やはり、日本人には日本食。身体が日本食に適応するようにできているのだろう。減量? またか!と言われそうであるが、今回は手ごたえを感じている(かな)。

つづく