シマノ「渓流TENKARA」発売

 

201212月よりシマノから「渓流TENKARA ZL」が発売されます。この竿は昨年春から開発をはじめ2年越しで完成したもので、この竿に私のテンカラ竿への想いがすべて詰まっています。シマノがネーミングをはじめとして私の想いをすべて製品化してくれました。

スペック 

3.4-3.8mズーム」「7本継ぎ」「自重80g」「仕舞い寸法70cm」「スパイラルX」「EVAグリップ」「定価27.000円」

位置づけ

私は渓流テンカラを「本流テンカラ ZE」の兄弟竿として位置づけました。本流テンカラは文字どおり本流でテンカラをする場合を考え、長いレベルラインの振り込みと、同時に本流の大物を掛けても簡単に寄せることができる粘り強い竿にしました。そのため、丈夫でバランスのいい竿だけれど4.0-4.5mのズームというスペックのため、一般的な渓流では使いこなせないという声も多く寄せられました。

細身設計

そこで、ごく一般的な渓流ならすべてのポイントをカバーできる3.4-3.8mのズームとしました。現在のテンカラ竿は3.6mが主流ですが、3.4-3.8mのズームとしたことでカバー範囲が拡がりました。

テンカラ竿は一日に何百回となく竿を振ります。竿の中でこれほどキャストの多い竿はありません。このためキャスティングを重視しなければなりません。テンカラ竿は自重よりも竿にかかる空気抵抗(風切り抵抗)が問題で、これには竿を細身にすれば抵抗を減らせます。そこで3.8mなら通常は8本継ぎですが、これを7本にしました。これにより仕舞い寸法は10cm長くなりましたが3.6mの竿より細く仕上がりました。仕舞い寸法が10cm長くなっても、これは許容範囲で、とくに不都合はないと考えます。

調子

3.4mで73調子、3.8mで64調子にしました。これまでのシマノのテンカラ竿は本流テンカラ以外は73調子がほとんどでした。軽いレベルラインを振る場合、初心者では振りにくいという声がありました。しかし、キャリアからは竿の遊びがない分、正確にキャスティングできると好評です。そこで3.8mにズームすれば初心者でも簡単にレベルラインがキャスティングできる64の胴調子にしました。

竿が、よりしなることから竿のチカラでレベルラインを簡単に飛ばすことができます。すでにレベルラインを使用している人は、現在の号数をワンランク細くして振ることができます。もちろん、テーパーラインにも対応できます。レベルラインが振れればテーパーラインのキャスティングは簡単です。テンカララインはレベルラインの方向に向かっています。多くのラインメーカーが専用レベルラインを発売しているのは流れがレベルラインにあることをみてとっているからです。この流れが逆流することはないでしょう。

スパイラルX

竿を細身にすることは可能です。しかし欠点が出ます。フッキングの弱さと、取り込みのとき竿がグルグル回ってしまうというパワーの指向性がなくなることです。胴に乗る細身の竿では、竿がクルクル回り、ラインがつかめないということがよくあります。そこで、細身を補うために カーボン繊維をX構造に巻きあげたスパイラルXを採用しました。下肢や太もものサポーターの中にX状にサポートするものがありますが、あれをイメージしてください。スパイラルXの採用により胴に乗る細身の竿でも左右への竿のネジレを抑え、 キャスティングの際のラインの直進性と、魚がまっすぐ寄る確実な取り込みを可能にしました。

スパイラルXについて

http://fishing.shimano.co.jp/jackall-shimano/technology/ 

EVAグリップ

私はかねがねEVAグリップが今後の主流になると思っていたので渓流テンカラに採用してもらいました。EVAグリップは弾力性があるので手へのアタリがやさしく、滑りません。渓流テンカラのグリップカラーは黒ですが、今後、さまざまなグリップカラーのテンカラ竿が出ると思います。渓流テンカラは今後のEVAグリップの方向性を示すさきがけとなりました。従来よりもグリップのくびれをつけたので握りやすくなっています。 さらに、尻栓部分もEVAで覆いました。これもシマノが初めてです。

ネーミング

「本流テンカラ」の兄弟竿なので「渓流TENKARA」。なんのひねりもありません。そのまんまです。私は渓流竿の渓○○などのネーミングは好きではありません。漢字で次から次に出るので、私自身、他メーカーの名前を憶えきれないし、そのため、そもそも最初から憶えようとしません。おそらく多くのユーザーもそうだと思います。そこで誰でもが忘れない名前として本流があるなら「渓流TENKARA」を提唱し、今回世に出ることになりました。渓流TENKARA、一度聞いたら忘れないネーミングと思います。

ロッドカラー

本流テンカラと同様に黒に近い緑の光沢カラーで1色です。これも私自身がシンプルなデザインが好きだからです。テンカラは日本の釣り。日本の渓流風景から浮き出ないカラーとデザインです。できるだけシンプルな仕様にして、そのぶん価格を下げることをお願いしました。

 いつも言われることですが、竿が1本売れるといくら入るの? 本流テンカラのときにも何度も言われました。シマノから1円ももらっていません。私はお金のためにやっているのではありません。自分がほしい理想の竿をシマノに造ってもらっています。ありがたいことです。私はテンカラを永い間やってきました。その経験から竿が原因でテンカラが楽しめない、上達しない人も多く、なんとかいい竿が出せないものかと考えてきました。

「こんな竿が欲しかったんだ」「これまでになかった竿だ」「おかげでテンカラがより楽しめる」と喜んでもらうこと、そのためだけに尽力しています。一度ぜひ手にとってください。

なお、12月から発売されますが、11/3-4の奥多摩の第4回テンカラファンの集い、および11/17-18の石徹白のイワナ産卵ウォッチングと忘年会で試し振りができます。