テンカラ撮影の進歩

 

今回、DVDを出すにあたってテンカラの撮影の進歩について振り返ってみました。私がテンカラの映像とかかわったのは、テンカラの研究からアマゴが毛バリをくわえている最短時間は0.2秒と雑誌に書き、NHKが1985年 に当時の超人気番組「ウルトラアイ」でそれを映像化したときが最初です。 今から27年前になります。

アマゴが毛バリを0.2秒で吐き出す映像(NHKウルトラアイより)

このとき、NHKは最新の超スロービデオでアマゴが毛バリを吐きだす瞬間を撮影しました。今ならホームビデオでも超スローで撮影可能かもしれませんが、当時はこの撮影のためにたくさんの機材が必要でした。

やがてテンカラの名人の紹介や私自身のビデオを出すなどしました。その頃はビデオテープの時代で撮影は重いカメラとVHSテープ、バッテリーが必要で助手がそれらをかついでヨロヨロしながら渓流を遡行しました。「転ぶな!カメラ1台で800万パーだぞ」と親方が助手をしかった言葉が耳に残ります。

撮影は大変です。他の釣りでは移動することはほとんどないし、目印、ウキ、竿の動きでアタリはわかるので撮影は簡単です。ところがテンカラはそうはいきません。移動の連続で、しかもアタリは一瞬、1台のカメラでその瞬間をアップで撮ることは非常に難しいのです。さらに釣り人より先行して上流にいけばポイントをつぶすので後ろから、せいぜい横からです。しかもほとんどがスカ。スカは使えません。気の小さい私などカメラマンに申し訳ないの連続です。

カメラマンがテンカラを知っていればいいのですが、ビデオの頃は初めての人ばかりでした。つまり、どこがポイントで、アタリがどのようなものかわからない。「あの流れで出るので、あそこの石の前に打つ」と指しても、あの流れと石がわからないのです。

アップにすると今度は毛バリが追えない。細いレベルラインはカメラに映らない。どうするかと言えば引き(広角)で撮ります。「今の撮れた?」「撮れた!OK」なので確認すると小さくしか映っていません。しかもラインが見えないので、曲がった竿とバシャバシャしている水しぶきだけが映っています。

テンカラの映像はアタリと合わせの瞬間こそ面白い。しかもアップで見たい。かねがねそう思ってました。今回、2台のカメラの同時録画でなんとかそれが実現できたと思います。デジタルなのでカメラは小さく、映像はカードに保存。2人のカメラマンはテンカラとフライをやります。だから「あそこのあの石」でツーカーでわかります。

といっても、身体の向きを変えるだけで撮影できないポジションができるので、その都度、あそこに打つと2人に確認です。カメラの位置を考え、立ち位置を決めます。1台はアップで1台が全景を撮れるというOKが出てからキャスティングします。ほとんどがスカ。また移動し、カメラをセットし・・その連続です。100mを釣るのに1時間程度かかります。

そんなこんなで撮影は苦労の連続です。私など好きな釣りなので楽しいのですが、仕事とは言え、限られた時間に撮らなければならないカメラマンの苦労は大変です。ただ、カメラマン曰く、フライパンの上で焼かれて臭いコマセの匂いを嗅ぐ、夏の磯釣りの撮影に比べれば、だそうです。