新竿テスト中

 

禁漁になりました。寂しい反面、どこそこで釣れたという情報で心が乱れずにホッとするときでもあります。オフの徒然に新竿の話です。

現在、シマノの新竿をテストしています。プロト3号まで進みましたが、さらにオフにもテストを重ね2シーズンかけて納得のいくものにします。来春にはテストを完了し、発売は平成25年(2013)春になります。

新竿のコンセプトは以下です。

・初心者がレベルラインを簡単に振れる

・一般的な渓流で万能な2wayズーム

・しなやかで軽い、そして丈夫

・リーズナブルな値段

 

私の竿の考え方

さまざまな種類のテンカラ竿が出ています。人によって竿の好みが違います。これはひとえにフィールドが違うからです。源流指向から、本流しかやらない人まで、さらにイワナだけ、大ものだけなどその指向はさまざまでそれに合わせて竿を選んでいますが、必ずしも明確な考えがあって選んでいるとは限りません。店員に薦められたからがその最たるものでしょう。店員でテンカラをする人は皆無に近く、客からの情報をもとに薦めています。

このため竿の好みや、持っている竿はバラバラです。好みで言えば、たとえば尾鷲の竹株さんのように3mで9:1の棒のような竿を使う人もいれば、飛騨の天野さんのように胴に乗る5:5調子の柔らかい竿を好む人もいます。これはそれぞれのフィールドと釣り方にあった竿だからで、どちらがいいというわけではありません。

極論すれば竿はそれを使い込めばどのようなラインでも、長さでも振ることができます。慣れてしまって手の一部になればボールを投げるのと同じです。それゆえ、ベテランになるほど自分の使っている竿がベストであると思い、それ以外の竿へ関心を示しません。その必要がないからです。無関心でいてくれればいいのですが、なんだこんな竿とけなす人もいます。

数年前に「本流テンカラZE」をプロデュースしました。4号レベルラインのロングラインを本流で振るという明確なコンセプトで作られたものです。したがってその目的で使う人には高い支持を受けています。しかし、長い分だけ、重く、初心者や女性がいきなり使うには適していません。

「渓峰テンカラ」「天平テンカラ」は7:3調子です。この竿は遊びの少ない竿です。いいかえれば遊びが少ないぶんだけ、前後、左右へのブレがなく慣れてしまえばピンスポットに確実に入る竿です。したがってキャリアにはこの竿の評価も高いのですが、竿がラインを飛ばすという部分が少ないだけに、まったくの初心者には敷居が高いかもしれません。

そこで入門者や女性がレベルラインを簡単に振れる竿ができないかと考えています。私は常にrolling stone。私はテンカラをもっと普及させたいのです。そのためには入門者や女性を増やすことです。すでにラインの主流はレベルラインで、さらに今後レベルラインが増えるでしょうから、入門者でも女性でも振れるレベルラインに適した竿ができないかと。

テンカラ竿の3つの使命

テンカラ竿には3つの使命があります。振込み、合わせ、取り込みです。そして軽く、丈夫であることです。これらを満たす竿ができないか。テンカラ竿は一日に何百回となく振ります。したがって振込みやすさと軽さがまず重視されます。

軽くするには素材を薄くすることで可能です。しかし、これでは簡単に折れてしまいます。竿の評価として折れるのは致命的です。折れるのでないかという不安は信頼感を損ないます。安いカーボン素材を使えば安価にできますが、薄くするほど簡単に折れます。竿をつまんでみてペコペコする竿などがこれです。

ヘナヘナな竿はフッキングの利きが悪くなります。胴がしなるだけで竿先までパワーが伝わらないからです。重いテーパーラインやフライラインとヘナヘナ竿の組み合わせは合わせが利かない最たるものです。ただし、軽いので一見よさそうに感じますが。

さらに取り込みがあります。やわらかな竿では取り込みのとき竿がクルクル、つまりラインがクルクルまわりラインをつかむのに手間取ります。さらに大物がかかった場合には取り込みに時間がかかりバラす原因になります。ハラハラするのが面白いという人には合っていますが。

振込み、合わせ、取り込み、そして軽くて丈夫、さらにはリーズナブル。これらを満たす竿があるはずです。それを求めてテストを繰り返します。誰もが満足する竿はできませんが「これまでになかった。こんな竿がほしかった」そう言ってもらえる竿を目指しています。

よく言われます。1本売れるといくら入るのですか? 1円ももらっていません。私はお金のために竿をプロデュースしているのではありません。理想の竿を求めて、そしてその竿を多くの人に使ってもらい、この竿に出会ってよかったと言ってもらえること、それが動機です。ご理解ください。