モンタナテンカラ紀行 (最終回)  テンカラは世界に

 

今日はモンタナでの最後の釣り。これから来る機会はもうないだろう。中野さんと町を背景に写真を撮る。マックで朝食。最初はギャラテンで竿を出すが、入ったところで1回だけアタリ。急に道路から声をかけられる。どうやらサミットの参加者で、走る車から釣り姿をみて私だとすぐわかったらしい。前傾してるから、特徴的なのだろう。

キャンピングカーで釣り歩いているらしい。ゴールデントラウトの写真を見せてくれた。場所はヒ・ミ・ツとのこと。ゴールデントラウトは貴重種なのだ。でもちょっと肥りすぎでactiveな釣りはできないかも。

ブライアンと合流して今日も撮影である。入った場所は川が樋状に狭くなったところで、強く深い流れがドッーと流れている場所である。毛バリまで8mの仕掛けがいっぱい、いっぱいである。ラインとハリスの結び目が水面スレスレに流れるようにすること数回でスッというアタリ。足場が悪くフッキングした魚について下るのがやっと。なんとか取り込んだのが尺のレインボー。小さいがブライアンが構えている中で釣ったことに満足する。

支流をやることになった。名前はハイライト。たばこの名前みたいだがHyaliteらしい。沢(クリーク)か川(リバー)か微妙な規模である。落差のない川で川ぎし一杯に流れているので直行しかできない。クリスとダニエルと私で交互に釣りのぼる。こんな川でも降り口がしっかりついているので結構人が入っているのだろう。

ブルックもいるとのことだが、全部、レインボーだった。ともかく掘れているところには必ずついていて簡単に釣れる。ただし尺越えはほとんどいない。北海道のオショコロマ釣りに似ている。ここは種沢になっていて、このような沢が無数にあり、そこから本流に魚が落ちるのだろう。あまりに釣れ過ぎて飽きてしまった。

モンタナの最後は本流をやることになったが5日間連続の釣りで、この頃にはすっかりクタビレていた。釣れるかもしれないが釣りはどちらでもよくなっていた。中野さんがカットスロートを釣る。顎の下が喉を切られたように真赤だ。レインボーの一種らしい。この日のモンタナの夕マズメは雲が厚く、広く平らな土地なのでどこで雨が降っているかひとめでわかる。

モンタナの最後のディナーはステーキハウスに決まった。なにせ牧畜が主産業だけにステーキは安くてでかい。手の平ふたつ分のステーキである。これにポテトがついて、あとはサラダ、といってもわずかの。圧倒的な野菜不足だ。ポテトも野菜だから十分と言えばそうかもしれない・・・うーん。

一週間、肉ばかりだとさすがに日本食を食べたい。しかし、ともかく人口が少ないので米が主食のレストランは皆無という。中国人の店があれば米が食えるのだが。がまんできずに翌日、サンフランシスコに戻って日本人街で寿司(カリフォルニアロール)を食べた。やっぱり日本食はいい。いろいろなロールがあってそのアイデアに関心する。

モンタナの最後にブライアンが毛バリ巻きを撮らせてほしいとのリクエスト。時間は夜の11時半だ。No problemよ。ただし日本語だからね。ギャグも入れるから。クルクルと声に出しながら、アイのところでは定番のギャグ。アイのところの巻き方が大事なのです。愛がすべて・・。巻き方が足りない人には愛がほしい・・。

誰も笑わない。中野さんだけがクスリ。Movieなので笑うと声が入るのでこらえていたとのこと。どうしようもないオヤジギャグなんだけど、タイミングによっては笑えると思う。

モンタナの釣りが終わった。今回、感じたのは私が考えていた以上の速さでテンカラが世界に普及していることだ。一番下の写真はニュージーランドのテンカラである。ニュージーランド・トラウトという雑誌の表紙である。中はテンカラの記事が半分。竿はTenkara USAである。

世界の人がTenkaraという日本のフライフィッシングを知りつつある。好奇心の強い人がやってみたところ、シンプルだが、それでいて釣れる。金もかからない。いけるじゃないかTenkaraは、と感じ出したのではないか。

堅苦しくなるが私はテンカラは日本の文化を象徴するものだと思っている。省略というか、1つのもので賄ってしまうという。以前の日本家屋は障子、ふすまで間仕切ることで広くも狭くも使え、布団を敷けばそこが寝室になり、茶ゃぶ台を出せば食堂になった。テンカラも1本の毛バリで水面も、水中直下も、沈めることもできる。

フライフィッシングが道具に依存し、たくさんのタックルでこれでもかベストがふくれるのとは対極の釣りである。ものがあふれる中、道具に依存しなくても釣れるのだと気づきだしたのではないだろうか。

テンカラは日本の文化(ものの考え方が具現化したもの)なのだと外国の人に説明するのは難しいが、不必要なものはそぎ落とし、道具に依存しないという考えは、これから世界中の人に共感を呼ぶのではないかと考えている。

テンカラが「Tenkara」になり、世界に普及するにつれ、それがどこの国が起源の釣りかあいまいになっていくだろうが、それはそれで仕方がない。

テンカラは世界に普及する可能性を持った釣りと実感したのが今回のビックフィッシュである。

モンタナの落日(動画)

 

 

END