モンタナテンカラ紀行 (その2)  ギャラティン川

 

時差ボケで眠れないまま朝を迎えた。モンタナはビックスカイとも呼ばれるそうで、視界の端から端まで広大な澄んだ青空が広がっていた。ウキィペディアによればモンタナ州は日本の面積より広く、しかし人口は100万人とのこと。これから向かうイエローストーン公園だけで日本の国土の1/4を占めるらしい。ともかく広く、町を外れれば平坦な草地と樹木の少ない山がひたすら続くだけである。

さっそくフライショップでライセンスを購入する。そこでフライショップの店員で、ガイドが仕事であるジョンと知り合う。向こうはファーストネームで呼び合うのでジョンでいいのだが、昔、飼っていた犬の名前と同じなので、犬を呼んでいるようでもある。人の良さが顔に出ている人物で、独身、37歳ですっかりオッサン体型である。

モンタナ州で10日間で60j、これにイエローストーンで釣りをするライセンスが20jである。円高なので6000円といったところか。キープは1日で1〜2匹らしい。そしてランチを買う。サンドイッチを頼んだが、 いつものことだがムチャクチャ多い。大食漢の私でも1回では食べきれず、夜まで持ち越すことになる。

イエローストーン公園の西の入口のウェスト・イエローンストーンの町がこれからのベースである。そこに向う道路の横をギャラティン川が流れている。ギャラティン川はモナタナ州を舞台にした父親と兄弟の物語である「A River Runs Through It」の川である。逆光の中でフライラインが華麗なループを描くシーンは記憶に残る場面である。

川の横は車が行き交い映画のような静寂さはないが、あの映画の場所でテンカラをすると思うといささか高揚している自分を感じる。高揚のもう一つの理由が昨年に続き今年もブライアンの撮影があるからだ。今回はアシュリンとリンの女性2人が助手である。

ブライアンはドキュメンタリー映画を製作するらしい。ダニエルを中心として、私やクリスとの関係などの映画をつくり、これを小劇場で上映し、全米に広げたいようだ。

日本のテンカラがアメリカで広まり、それをダニエルがやっていることは、いわば剣道がアメリカに上陸し、それを広めているのが日本人ではなくアメリカ人であるのと同じような驚きをもって見ているようである。だから、ドキュメンタリーを作りたいのだろう。撮影は来年もあるとのことだった。

ギャラティン川は広いところで川幅40mくらいあるものの、ロングラインを使えばほとんどのポイントを探ることができた。ほとんどレインボーで、たまにブラウンらしい。ポイントはわかりやすい。岩のうしろのたるみ、対岸のたるみに毛バリを打てば反応がある。特に対岸はまったく竿が入っていないようだ。フライでは流芯の速い流れにラインをとられるので、誰も攻めないからだろう。

ただし魚の数は少ない。ここはという場所にしかいない。一切の放流がなく、キープされることもほとんどないので、魚の数は一定となるためゴチャゴチャとはいない。魚は居心地のいい場所を占めるので、一等地にしか いない理屈である。

流れが速いので、掛けてからが面白い。我々がやったこの場所では最大で35cmのレインボーであったが、下流に下れないと流れに乗って一気に走られウンスンもなくバレる。ここでは9匹ヒットして、取りこんだのは6匹であった。

夕方になって雲が集まり雷が鳴り出した。遠雷とかすかな稲光であるが、こちらの人は慎重だ。早めの竿仕舞いとなった。連日、夕方になると雲が集まり雷が鳴った。

夜は明日のテンカラサミットに向けての前夜祭である。ノルウェイからクリスが来ていた。彼は自分でテンカラの写真集を作っている。自費出版のようだ。ノルウェイのテンカラを熱く語る。しかし、テンカラ人口はまだ1人。クリスしかいないのがさみしいとのこと。頑張れクリス! ノルウェイのテンカラの星になれ。

ユタ州から元気のいい3人組が来ていた。そろって緑のキャップをかぶっている。この3人、ユタ州のテンカラガイドのプロらしい。もっとも、そのうちの一人の ロブ(Rob)はドクターなので、テンカラのガイドはあくまでサイドビジネスのようだ。プロというだけになかなかの腕があることを後日知ることになる。

郊外を走る。ひたすら広大(動画)