石徹白F・Hレポート(その2)

 

魚に与える釣獲圧

少し真面目にC&Rの意義について考えてみました。リリースすれば魚が殖えることを石徹白C&R区間は証明したわけですが、リリースすれば増えることを確たるものとするには、持ち帰れば魚が減るという証明も必要になります。「持ち帰っても魚は減らないのだ。だから持ち帰っても構 わない」という理屈に反論するために。

2010信濃大町テンカラミーティング&講習会において長野県水産試験場の小原環境部長がC&Rの効果について講演したのですが、その論文が「野生イワナの毛鉤釣りによるCatch-and-Release後のCPUEと生息尾数の変化」(山本聡、他4名)、SUISANZOSHOKU , 49(4), 2001というものです。

改めて読みなおしてみました。これは禁漁期間中に長野県の某小渓流500m、平均川幅2.2mの区間を調査のためのC&R区間とし、そこをフライとテンカラ、つまり毛バリ釣りだけでイワナを釣り、標識をつけて再放流し、死亡率、再捕率、その他を分析したものです。海外や国内のデータと比較しています。

そこでの主な点をまとめると

@「毛バリによる死亡率は2%であった」 

アメリカのYellowstone Riverでの調査ではC&Rによる死亡率は0.3〜3%と推定されており、これらから推定してもC&Rによる死亡率は低いとしています。つまり、C&Rでは魚はほとんど死なないわけです。

A「もし、この小渓流がC&Rでなかったとしたら、生息尾数の35%が13人・回の釣りでいなくなると予想された」 

これは13人が1回だけ、あるいは同じ1人の釣り人が13回釣りをしただけで、そこの35%を釣ってしまうことを示しています。つまり、自分は1回しかこの渓に来ない、だから1回ぐらい持ち帰っていいだろうと思っても、それがこの例では、そのような人が13人いれば35%を釣ってしまい、ということはその3倍、のべ40人が釣ればそこの魚はいなくなることを示すものです。

魚を持ち帰る限り、魚は絶対に増えないし、いいかえれば持ち帰りの釣り人がいる限り、どれだけ魚を放流しても限りがないことを示すものです。あそこは釣れるぞという情報が流れ、ソレッと押し寄せれば一気にいなくなります。

ここは調査のための小渓流なので、渓流域や本流域とは違うかもしれません。しかし、小渓流ということは源流の種沢なので、このような源流で釣りまくってしまえば、そこで繁殖し、渓流や本流に下る魚がまったくいなくなることになります。

このようなところでの餌釣りは赤子の手をひねるようなものだし、子供と相撲をとって勝ったと喜ぶようなものです。源流域での釣りを禁止しない限り、魚の増殖は望めないと思うし、種沢でなくても匹数制限は絶対に必要になると思います。

ぜひ、このようなデータを漁協は知ってほしいと思います。魚が自然繁殖すれば、それは漁協の放流数が少なくなることであり、経費的にも、また放流するマンパワーにもプラスになるからです。我々釣り人も、自分一人が釣っても大したことはないと思わず、大勢になれば魚に与える釣獲圧がいかに高いかを知っておく必要があると思います。

リリースの方法

石徹白のC&Rに魚がいるとなると大勢の人が訪れます。中にはリリースの仕方を知らない人も増えてきました。リリースは「魚を水にほかる」のとは違います。リリースした後、泳いでいったから大丈夫とは限りません。いくつかのルールがあります。

@鉤はバーブレスフックを使用する。返しをつぶしたものでもOKとなっているC&R区間が多いのですが、つぶしただけでは外しにくいので、C&Rで釣りをするならバーブレスを使ってほしいものです。

A写真を撮る人が多いと思います。写真はできるだけ魚の身体を水につけた状態で。どうしても手で持つ場合でも、手を水で濡らしてから。また短時間で撮影するようにしたいですね。陸に上げて石の上に置いて撮るなどはもってのほかです。

B魚を陸にズリあげない。陸にズリ上げた際のダメージが大きいのです。砂まみれにしないようにしましょう。ネットですくうのが一番ダメージが少ないと思います。

C道から釣りをしない。魚が道路や橋から見えるとついつい竿を出したくなります。もし掛けた場合、取り込みとリリースはどうするのでしょうか。それを考えれば道から竿は出せないことがわかると思います。その他ありますが、主なものだけです。

石徹白は現在、イワナが主体です。アマゴとは8対2ぐらいでしょうか。長大な本流、数多い支流、周囲の山々が安定しているのでいい魚が育ちます。私の釣り仲間のアユタヤ鈴村君がイベントの折、本流で40cmのイワナを掛けました。これまでの記録更新です。もちろん、リリースしました。とるのは写真だけ、命ではない。リリースされたイワナは他の釣り師に釣られない限り産卵に参加するでしょう。

アマゴンスキー木村さんの写真撮影に参加しました。いろいろなことを教えてもらいました。なるほどプロはそういうテクニックを使うのか。腰をかがめて、顔が水面につくくらいの姿勢で撮ればいい写真になるのでしょうが、肝心の腰がギィギッっと。ジャシャ(シャターの音)  肝心の魚の顔が映ってません。